パンフィロ・デ・ナルバエス

パンフィロ・デ・ナルバエス（Pánfilo de Narváez, 1470年 - 1528年）は、15世紀から16世紀にかけて活躍したスペインの軍人であり、コンキスタドール（征服者）として知られています。彼の生涯は、新大陸での探検と征服活動に彩られ、その過程で数々の困難と挫折を経験しました。

若年期とカリブ海での活動

ナルバエスは1470年に、カスティーリャ地方のクエリャルまたはバリャドリッドで生まれました。1509年にはジャマイカの征服に参加し、その軍事的な才能を初期の段階から示しました。1512年には、ディエゴ・ベラスケス・デ・クエリャルの命令の下、キューバ征服にも参加し、バルトロメ・デ・ラス・カサスやフアン・デ・グリハルバと共に島の東端まで遠征しました。これらの活動を通じて、ナルバエスは新大陸での征服活動の経験を積み重ねていきました。

メキシコ遠征とコルテスとの対立

イスパニョーラ島とキューバでの生活を経て、ナルバエスはメキシコ遠征に派遣されます。この遠征は、エルナン・コルテスの野心を阻止することを目的としていました。ベラスケスの代理人として派遣されたナルバエスは、ベラクルスに到着しましたが、彼の部隊の多くがコルテス側に寝返るという事態に直面します。1520年5月24日、センポアラでの戦闘でナルバエスはコルテス軍に敗北し、自身も負傷しました。その後、ナルバエスは約2年間、コルテスによってベラクルスまたはセンポアラに幽閉されました。解放後、スペインに帰国したナルバエスは、その後のフロリダ遠征へと繋がる新たな転機を迎えることになります。

フロリダ遠征と悲劇

帰国後、ナルバエスはスペイン王カルロス1世によってフロリダのアデランタード（先遣都督）に任命されました。1527年6月17日、彼は5隻の船と700名の隊員を率いてアンダルシア州カディス県のサンルーカル・デ・バラメーダから出発しました。1528年4月、ナルバエス遠征隊は嵐と荒波を乗り越え、フロリダの海岸に到着しました。しかし、彼らが上陸したのは、現在のフロリダ州タンパ湾付近のリオ・デ・ラス・パルマスと呼ばれる場所で、そこは敵対的な先住民が住む地域でした。上陸した時には既に多くの隊員を失っており、生き残ったのは300名程度でした。

遠征隊は、内陸のフロリダを北上し、強力なアパラチーインディアンの領域にまで達しましたが、伝説上の黄金や財宝を発見することはできませんでした。先住民の敵対心に疲弊したナルバエスは、4艘のいかだで海へと戻ることを決意しました。彼はメキシコへ向かうことを目指しましたが、その航海中に嵐に遭遇し、4艘のうち2艘がいかだごと破壊され、遠征隊のほとんどが命を落としました。嵐で生き残った約80名は、徒歩でメキシコシティを目指しましたが、食料不足や厳しい環境により、最終的にメキシコシティにたどり着けたのは、アルバル・ヌニェス・カベサ・デ・バカ、アロンソ・デル・カスティーリョ・マルドナード、アンドレス・ドランテス・デ・カランサ、そしてエステバニコという名のベルベル人奴隷の4名のみでした。特にエステバニコは、現在のアメリカ合衆国地域に入った最初のアフリカ人として歴史に名を残しました。

カベサ・デ・バカの記録

カベサ・デ・バカは、この過酷な旅の記録を『Naufragios（難破）』という題名で著しました。その中で、4人の生存者がアメリカ南東部を徒歩で横断し、スペインの開拓地があるシナロア州クリアカンに到着するまでの8年間に及ぶ壮絶な旅が詳細に記述されています。この記録は、当時の新大陸における探検の困難さや先住民との接触、そして生存者たちの不屈の精神を今日に伝える貴重な資料となっています。

ナルバエスの遠征は、その悲劇的な結末にもかかわらず、新大陸の探検と植民地化の歴史において重要な位置を占めています。彼の経験は、後世の探検家たちに大きな教訓を与え、新大陸の歴史に大きな影響を与えました。

外部リンク

Cabeza de Vaca's Trail with Pánfilo de Narváez in North America

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