アルバータ州の地方行政区

アルバータ州の地方行政区分

カナダの中西部に位置するアルバータ州には、多様な形態を持つ地方行政区分が設けられています。法的に定義された市町村などの自治体をはじめ、州政府が直接管理する地域、先住民の居住区域、さらにはカナダ統計局が定める統計上の区分など、その種類は多岐にわたります。これらの区分は、州の広大な地理、人口分布、歴史的背景などを反映しており、それぞれの区域で異なる行政サービスや統治形態が採用されています。

カナダ統計局は、これらの地方行政区分を「国勢調査小区分（Census Subdivision, CSD）」として利用しており、さらにこれらを地理的にまとめて「国勢調査区分（Census Division, CD）」としています。アルバータ州は19の国勢調査区分に分割されています。また、人口規模に基づいた統計上の区分として、大都市とその周辺を含む「国勢調査都市圏（Census Metropolitan Area, CMA）」と、都市とその周辺地域を含む「国勢調査地区群（Census Agglomeration, CA）」も定義されています。CMAは大規模な都市圏を、CAはそれより小規模な都市圏をそれぞれ捉えるための区分です。

地方自治体（Municipal Government Actに基づく主要な区分）

アルバータ州の地方自治体の多くは、州の地方自治体法（Municipal Government Act, MGA）に基づいて設立されています。MGAでは、居住形態や人口密度に応じて、主に集住型と広域型の基礎自治体を定めています。

集住型自治体

比較的居住が集積した地域に設置される基礎自治体には、以下の四種類があります。これらの自治体を新たに設置する際の一般的な要件として、建物の大半が1,850平方メートル未満の敷地に建てられていることが挙げられています。

市（City）: 人口が1万人を超える地域に設置されます。2012年時点では、州内に17の市が存在していました。
町（Town）: 人口が1,000人以上の地域に設置されます。2012年時点では、108の町が存在しました。
村（Village）: 人口が300人以上の地域に設置されます。2012年時点では、93の村が存在しました。
サマービレッジ（Summer Village）: 歴史的に夏季の別荘地として発展した地域に設けられた特殊な形態の自治体です。設置には、60以上の住居区画があり、人口が300人未満で、かつ有権者の大部分が非定住者であることが要件とされていました。1995年の法改正以降、新たな設置は行われていませんが、2012年時点では51のサマービレッジが現存しています。通常とは異なり夏季に定例議会が開催される点や、非定住者にも投票権が認められる点を除けば、概ね村と同様の機能を持っています。

広域型自治体

州内に広く分布する地域を管轄する基礎自治体として、ミュニシパルディストリクト（Municipal District）がMGAに定められています。新たな設置要件としては、住居の大半が1,850平方メートル以上の広い敷地に建てられていること、および人口が1,000人以上であることが一般的です。歴史的には、より広範な地域を管轄する郡（county）に由来する形態です。2012年時点では64のミュニシパルディストリクトが存在し、そのうち46は正式名称に「county」を用いています。ミュニシパルディストリクトは、シティやタウンといった集住型の自治体とは異なる広域自治体でありながら、法的には同等の地位にあります。その区域内には、非法人地域であるハムレット（hamlet、村落）を設けることが可能です。

特別自治体

MGAやその他の法令が定める既存の自治体形態が、特定の地域の特性に適合しない場合に設置されるのが、特別自治体（Specialized Municipality）です。これは、集住型自治体と広域型自治体の特性を併せ持つ柔軟な行政区域として機能します。2012年時点では5つの特別自治体が存在しており、その名称は「county」「municipality」「regional municipality」など、統一されていません。

地方自治体に相当するその他の区域

MGA以外の法令や州政府の管轄下で、地方自治体に準ずる行政機能を担う地域も存在します。

開発推進地区（Improvement District）: 人口が非常に少なく、自治体が存在しないため州政府が直接管理する地域です。MGAの規定に基づき、自治体議会に相当する評議会が設置されています。2012年時点では8つの開発推進地区が存在し、その区域はほぼ国立公園や州立公園などの保護地域に相当します。
特別地区（Special Area）: 1930年代の干ばつに対応するために制定されたSpecial Area Actに基づき定められた地域です。形式上は三つの特別地区に分かれていますが、これらは互いに隣接しており、州政府の監督のもと一体的に運営されています。
メティ居住地（Métis Settlement）: Métis Population Betterment Actの適用を受ける地域です。カナダの先住民族の一つであるメティの人々のために設けられた居住区域であり、2012年時点では8つが存在しています。
インディアン居留地（Indian Reserve）: 英領北アメリカ法に基づき、カナダ連邦議会と連邦政府の管轄下に置かれている地域です。先住民政府による自治が行われています。

地方自治体ではない地域区分

正式な地方自治体として編制されてはいませんが、独自の領域と名称を持つコミュニティや地域区分も存在します。

ハムレット（Hamlet）: ミュニシパルディストリクトなどの区域内に設けられる、5棟以上の住居があり、その大半が1,850平方メートル以下の敷地に建てられている集落です。人口が300人を超えると村への変更申請が可能ですが、義務ではありません。近年は、逆に村からハムレットへ変更される地区が増える傾向にあります。2012年時点では389のハムレットが存在していました。
都市サービス地区（Urban Service Area）: ハムレットのうち、市と同等の都市サービスが提供されるとみなされる地区です。ウッドバッファロー特別自治体に含まれるフォートマクマレー地区などがこれに該当します。2012年時点では2地区が存在しました。
タウンサイト（Townsite）: インディアン居留地内に存在する独立した集落で、町の規模や機能に匹敵する地区を指します。2012年時点において、アルバータ州で唯一のタウンサイトは、ツウティナ居住地内にあるレッドウッド・メドウズでした。

カナダ統計局による国勢調査区分

カナダ統計局は、国勢調査や統計分析のために独自の地理的区分を設けています。

国勢調査区分（Census Division, CD）: カナダ統計局が定める、国勢調査小区分を地理的に集約した広域区分です。アルバータ州は19の国勢調査区分に分割されています。
国勢調査小区分（Census Subdivision, CSD）: 国勢調査の基本単位であり、一般的に前述の市町村や特別区などの地方自治体、あるいはそれに相当する地域（インディアン居留地や開発推進地区など）がそのまま用いられます。
国勢調査都市圏（Census Metropolitan Area, CMA） / 国勢調査地区群（Census Agglomeration, CA）: 人口規模に基づいて定義される都市圏の統計区分です。CMAは中心となる都市とその周辺の人口密集地域からなる大都市圏を、CAはより小規模な都市とその周辺の国勢調査小区分からなる都市圏をそれぞれ指します。

アルバータ州の地方行政区分は、このように多層的かつ多様であり、それぞれの地域が持つ固有の性質や歴史に基づいた統治形態がとられています。これらの区分を理解することは、アルバータ州の地理、人口構造、そして行政の仕組みを深く理解する上で不可欠です。

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