アルバート・サモンズ

アルバート・エドワード・サモンズ（Albert Edward Sammons, 1886年2月23日 - 1957年8月24日）は、20世紀前半のイギリスを代表するヴァイオリン奏者、そして作曲家です。その生涯は、自己研鑽と偶然の出会い、そして音楽への情熱に彩られていました。

ロンドンの地に生を受けたサモンズは、まず父や兄からヴァイオリンの基礎を学びました。専門的な指導としては、ヴィルヘルム・ベルンハルト・モリークに師事したジョン・サウンダース、そしてウジェーヌ・イザイの弟子であるフレデリック・ウェイスト・ヒルとアルフレード・フェルナンデスといった著名な音楽家から短期間の教えを受けましたが、彼のヴァイオリン技法の大部分は、その後の独学によって培われたものです。これは、当時の標準的な音楽教育の道筋からは外れる、彼のキャリアにおける特異な側面と言えます。

彼のキャリアが大きく転換したのは1908年、ロンドンのワルドルフ・ホテルでの演奏がきっかけでした。ここで彼の才能を見出したのは、後にイギリス楽壇の重要人物となる指揮者トーマス・ビーチャムです。ビーチャムはサモンズを高く評価し、自身が新たに設立したオーケストラのコンサートマスターに抜擢しました。この出会いと任命により、サモンズは一躍脚光を浴び、ソリストとしての道も開かれていきました。

ソリストとしての活動に加え、彼は室内楽にも強い関心を示しました。1910年には自らロンドン弦楽四重奏団を結成し、1919年までそのメンバーとして精力的に活動を行いました。この四重奏団は当時のイギリス音楽界において重要な存在となります。また、1911年には国王ジョージ5世の常任音楽家という栄誉ある職に任命されるなど、公的な場でもその才能が認められました。

第一次世界大戦中、サモンズはヴァイオリンを一旦置き、近衛歩兵の楽隊でクラリネットを演奏するという異色の経験をしています。この時期に、後に彼の重要な音楽パートナーとなるピアニストのウィリアム・マードックと出会いました。戦後、二人はデュオを組み、数多くのコンサートで共演し、特にベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの演奏は高い評価を得ました。

演奏家としてのキャリアに加え、サモンズは教育者としても尽力しました。1939年からはロンドンの王立音楽大学で教鞭を執り、後進の指導にあたります。その功績が認められ、1944年には大英帝国勲章CBE（コマンダー）を叙勲されました。

第二次世界大戦後、サモンズはパーキンソン病を患います。病状の進行は、彼の演奏活動に大きな影響を与え、1948年にはやむなく演奏家としてのキャリアから身を引くこととなりました。その後も教育活動は続けましたが、病のため1954年には王立音楽大学の職も退きました。サモンズは、1957年8月24日、サウスディーンにてその生涯を閉じました。

彼は演奏家、教育者としてだけでなく、作曲家としても活動し、特にヴァイオリンのための教本を数冊出版しています。『Secret of Technique in Violin Playing』（1916年）や『Virtuosic Studies for the daily practice of the Violin』（1921年）は、彼の培った技術論や練習法を示す重要な著作です。

アルバート・サモンズは、独学で培った独自のスタイルと、ビーチャムとの出会いを契機とした活躍、多岐にわたる音楽活動、そして教育者としての貢献を通じて、イギリス音楽史に確固たる足跡を残したヴァイオリニストと言えるでしょう。

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