アルファロメオ・アルフェッタ

アルファロメオ アルフェッタ：スポーティサルーンの傑作とその光と影

アルファロメオ アルフェッタは、1972年から1984年にかけて製造された、同社の小型乗用車です。ジュリアの後継として登場したアルフェッタは、アルファロメオの伝統と技術を凝縮したモデルとして、高い評価を受けました。その名は、1950年代初頭のグランプリカー、ティーポ159の愛称に由来し、「小さなアルファロメオ」を意味しています。

優れたシャシー設計と走行性能

アルフェッタの最大の特徴は、その革新的なシャシー設計にあります。トランスアクスル方式を採用することで、変速機とデファレンシャルギアを後軸に配置。これにより、バネ下重量を軽減し、理想的な前後重量配分（50:50）を実現しました。さらに、ド・ディオンアクスルによる後輪サスペンションが、シャープなハンドリングと快適な乗り心地を両立させています。これらの技術により、アルフェッタは当時のスポーティサルーンの中でも群を抜く走行性能を誇りました。

モデルバリエーションと進化

アルフェッタは、4ドアセダンのベルリーナと3ドアクーペのGTという2つの主要なボディタイプが展開されました。ベルリーナは、1.6L、1.8L、2.0L、そしてディーゼルエンジンモデルが用意され、時代のニーズに合わせて進化を遂げました。GTは、ジョルジェット・ジウジアーロによるスタイリッシュなデザインが特徴で、広いグラスエリアと快適な室内空間を実現しました。特に、2.5L V6エンジンを搭載したGTV6は、アルファロメオの新たなイメージを確立するモデルとなりました。

モータースポーツでの活躍

アルフェッタは、モータースポーツの世界でも活躍しました。ラリー競技では、特にGTV6が注目を集め、フランスのプライベータであるGEMAレーシングの手によって、WRCやフランス国内ラリーで上位入賞を果たしました。しかし、アルファロメオ自体のラリーへの取り組みが積極的ではなかったことや、Gr.A規定への適合問題などもあり、大きな成功を収めるまでには至りませんでした。

日本市場とアルファロメオ

日本市場では、1973年から伊藤忠オートがアルフェッタの輸入を開始しました。DOHCエンジンによる高い動力性能と優れたハンドリングは高く評価され、多くのファンを獲得しました。しかし、1977年以降の厳しい排気ガス規制に対応するため、北米仕様のエンジンに変更されたことで、性能とハンドリングが大きく低下。人気は急速に衰えていきました。その後、伊藤忠オートがアルファロメオの販売から撤退し、日英自動車が限定輸入を継続しましたが、アルフェッタの日本での歴史は幕を閉じました。

設計上の欠点と課題

アルフェッタは、優れた基本設計を持つ一方で、いくつかの欠点も抱えていました。雑な工作や不十分な防錆対策、シフトフィーリングの悪さ、プロペラシャフトの振動などは、当時のイタリア車に共通する問題でした。また、北米や日本向けに施された排気ガス対策は、動力性能やハンドリングの低下を招き、販売に悪影響を及ぼしました。これらの問題が、1970年代後半から1980年代前半にかけてアルファロメオが不振に陥った一因ともなっています。

まとめ

アルフェッタは、優れた走行性能とスポーティなデザインで人気を博した一方、設計上の欠点や時代の変化に対応しきれなかった面も持っていました。その歴史は、成功と課題が複雑に絡み合った、アルファロメオの技術力と経営判断を象徴するものです。アルフェッタは、アルファロメオの歴史において重要な位置を占めるモデルであり、その輝かしい実績と苦悩を学ぶことで、同社のブランドの深みと魅力をより深く理解することができるでしょう。

もう一度検索