アルフォンソ・デ・ポルターゴ

アルフォンソ・デ・ポルターゴ：栄光と悲劇のレーシングドライバー

1928年10月11日、ロンドンに生まれたアルフォンソ・アントニオ・ヴィセンテ・エドゥアルド・アンヘル・ブラス・フランシスコ・デ・ボルハ・カベサ・デ・バカ・イ・レイトンは、スペイン屈指の名家、ポルターゴ侯爵家の第11代当主でした。一般にはアルフォンソ・デ・ポルターゴとして知られています。彼は貴族の血筋を受け継ぎ、莫大な富と多様な才能を持つ、まさに時代の寵児でした。

華麗なる出自と多才な才能

フランスのビアリッツで教育を受けたポルターゴは、4カ国語を操るなど、並外れた知性と教養を身に付けていました。彼の祖先には、探検家として名高いアルバル・ヌニェス・カベサ・デ・バカやマドリード総督など、スペインの歴史に名を刻んだ人物が数多く含まれていました。幼少期に父を亡くした彼は、アイルランド人の母と複雑な家庭環境の中で育ちました。しかし、その環境は彼を弱めるどころか、むしろ強靭な精神力を養ったのかもしれません。

17歳で、飛行機で橋の下をくぐるという大胆な賭けに成功した逸話からも、彼の型破りで冒険的な性格が伺えます。また、彼はエイントリー競馬場のグランドナショナルにも挑戦しましたが、高身長のため減量に苦戦したというエピソードは、彼の努力家の一面を垣間見せてくれます。

疾風怒涛のレーシング人生

ポルターゴのレーシングキャリアは、1953年にアメリカのフェラーリ輸入商からの誘いをきっかけに始まりました。その後、彼はカレラ・パナメリカーナ・メヒコやブエノスアイレス1000kmレースなど、世界各地のレースに参戦。ツール・ド・フランス・オートモビルやオポルトグランプリなど、数々のレースで優勝を飾りました。ナッソー・ガバナーズ・カップでは、前車にわずか数センチ差で時速240kmという驚異的なスピードで走行したこともありました。

彼のドライビングは、常に限界に挑戦する、まさに命知らずと言えるものでした。レース中に度々マシンを壊すことから、「ツーカーマン (two-car man)」という異名で呼ばれるほどでした。1956年にはF1にも参戦し、最高位2位を獲得。チャンピオンシップポイントも獲得するなど、高い実力を示しました。しかし、1955年のイギリスグランプリでは事故により足を骨折するなど、危険と隣り合わせのレース生活を送っていました。

ボブスレーでの活躍

レーシングドライバーとしての活動だけでなく、ポルターゴはボブスレー選手としても活躍しました。1956年コルティーナ・ダンペッツォ冬季オリンピックでは、スペイン初のボブスレーチームを結成し、僅差で4位という好成績を残しました。その後も世界選手権で銅メダルを獲得するなど、その才能は多岐に渡りました。アメリカ人ボブスレー選手、エドムンド・ネルソンとの交流も深く、彼は後にミッレミリアでの悲劇的な事故でポルターゴと共に命を落とすことになります。

ミッレミリアでの悲劇

1957年5月12日、ミッレミリアでポルターゴの運命は変わりました。時速240kmで走行中、タイヤのパンクにより車がコースアウト。観客席に突っ込み、ポルターゴ自身とコ・ドライバーのネルソン、そして観客9名（子供5名を含む）が死亡するという、痛ましい事故を引き起こしました。この事故は、ミッレミリアの歴史に暗い影を落とすこととなり、レースの中止を余儀なくさせる結果となりました。

ポルターゴの死は、多くの人の心に深い悲しみと衝撃を与えました。彼の華麗な人生は、わずか28歳で幕を閉じました。しかし、彼の功績は今も人々の記憶に深く刻まれています。サンモリッツやハラマ・サーキットには、彼を称える「ポルターゴカーブ」が存在し、彼の活躍を後世に伝えています。

波乱万丈な私生活

彼の私生活も、レース人生と同じくらい波乱に満ちていました。20歳で結婚した妻との間には子供もいましたが、離婚協議中であったとされます。他にも複数の女性との交際が伝えられており、彼の奔放な性格が窺えます。彼の娘は写真家として成功し、息子は株式仲買人として活躍しました。彼の家族は、彼の人生と死を乗り越え、それぞれの人生を歩んでいます。

アルフォンソ・デ・ポルターゴは、才能と富、そして華麗な人生と悲劇的な最期を併せ持った、伝説的な人物でした。彼の名は、永遠にモータースポーツ史に刻まれることでしょう。彼の生き様は、私たちに多くのことを教えてくれます。彼の勇気、情熱、そして人生の儚さについて。そして、スピードへの憧れと、その危険性について。

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