アルベオラータ

アルベオラータ (Alveolata)

アルベオラータは、原生生物の中でも非常に多様な系統の一つであり、繊毛虫、渦鞭毛藻、アピコンプレクサなど、さまざまな生物が含まれています。これらの生物は形態的には異なるものの、微細構造や遺伝的特性において共通点が多く見られます。また、アルベオラータはストラメノパイルやリザリアとともに、SARスーパーグループを形成しています。

系統分類

国際原生生物学会（ISOP）がまとめた2019年版の分類体系によれば、アルベオラータには以下の系統群が含まれます。これらの生物は、その系統的な位置づけから独自の特徴と進化の道筋を示しています。

形態的特徴

アルベオラータの最も顕著な特徴は、細胞表層に存在するアルベオールと呼ばれる構造です。これは、細胞膜を下支えしている平らな小胞で、柔軟な外被（pellicle）を形成します。特に渦鞭毛虫では、アルベオール内部に鎧板という強固な構造が作られます。また、アルベオラータに属する生物のミトコンドリアは管状のクリステを持ち、鞭毛や繊毛には特有の構造が観察されます。

研究によると、アピコンプレクサと渦鞭毛虫の方が繊毛虫に比べ、互いに近縁であるとされ、これによってアルベオラータの系統樹が構築されています。

これらの生物はいずれもプラスチドを持ち、渦鞭毛藻の約50%は葉緑体を保有しています。一方で、アピコンプレクサは葉緑体を持たない代わりに、葉緑体起源だと考えられるアピコプラストという細胞器官を持っています。

頭頂部には多くの場合、微小管の束や円錐構造が存在し、これがアピコンプレクサにおける宿主細胞への侵入に寄与します。無色渦鞭毛虫の場合、この構造は餌の摂取に使用されることがあります。また、OxyrrhisやColponemaといった自由生活性の鞭毛虫、またはPerkinsusやChromeraのような寄生性の生物も、近縁な属として知られています。

研究の歴史

アルベオラータに関する研究は1980年代から進められており、キャヴァリエ＝スミスが1991年にこのグループ名を提唱しました。当時の分子系統解析によって、アピコンプレクサ、渦鞭毛虫、繊毛虫の間の近縁性が支持される結果が得られました。この中には寄生虫として知られるアセトスポラ類も一時的に含まれましたが、現在はケルコゾアに分類されています。

プラスチドの獲得

アルベオラータにおけるプラスチドの起源は未解決の問題で、多数の仮説があります。渦鞭毛藻の一部が持つ葉緑体は、サンゴの共生藻Chromeraと同様に機能しています。ただし、アピコンプレクサでは、複数の膜を持つ細胞器官が確認されており、ここから見つかったDNAは葉緑体に似た性質を示すことから、これらは痕跡的なプラスチドだと考えています。

キャヴァリエ＝スミスは、アルベオラータが葉緑体を持つ祖先から進化したとの説を唱えていますが、葉緑体が比較的進化が進んだグループにしか見られないことから、独自にプラスチドを獲得した可能性も指摘されています。つまり、アルベオラータは元々プラスチドを持たなかったのかもしれませんが、その進化の過程は今後の研究によってさらなる解明が期待されています。

参考文献

• - Cavalier-Smith, T. (1991). Cell diversification in heterotrophic flagellates. In The Biology of Free-living Heterotrophic Flagellates, ed. D.J. Patterson & J. Larsen. pp. 113-131. Oxford University Press.

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