アルベリク・マニャール

アルベリク・マニャール：孤高の魂が刻んだ音楽

アルベリク・マニャール（1865-1914）は、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの作曲家です。リュシアン・ドニ・ガブリエル・アルベリク・マニャールとしてパリに生まれ、その生涯は第一次世界大戦の勃発という激動の中で悲劇的な結末を迎えました。

彼は著名なベストセラー作家で『フィガロ』紙の主幹であったフランシス・マニャールを父に持ちましたが、その「フィガロの息子」という立場に頼ることを潔しとせず、自身の音楽的才能のみによって自立することを強く望みました。経済的な援助を一切受けず、自らの力で道を切り開こうとしたのです。兵役を経て法律学校で学んだ後、パリ音楽院で対位法をテオドール・デュボアに、作曲をジュール・マスネに師事しました。しかし、彼の音楽家としての方向性を決定づける上で最も重要な出会いとなったのは、ヴァンサン・ダンディとのものでした。マニャールはダンディに個人的に師事し、4年間にわたってフーガや管弦楽法について深く学びました。彼の初期の重要な作品である最初の2つの交響曲は、ダンディの指導のもとで作曲され、『交響曲 第1番 ハ短調』は師ダンディに献呈されています。

父フランシスは、息子の自立への強い意志を尊重しつつも、可能な限りの支援を惜しみませんでした。『フィガロ』紙での宣伝活動もその一環でした。しかし、1894年に父が他界した際のマニャールの落胆は深く、そこには父への感謝と共に、自立への葛藤が入り混じった複雑な感情が表れていました。

1896年にジュリー・クレトンと結婚し、翌年にはスコラ・カントルムの対位法教師に就任するなど、キャリアを重ねていきます。この頃に作曲されたのが『交響曲 第3番 嬰ハ短調』です。しかし、この時期から難聴に悩まされるようになり、元来控えめだった性格に加え、ますます社交を避けるようになりました。スコラ・カントルムでの教鞭は約半年という短い期間にとどまり、以降は作曲活動に専念しました。作品の一部、特に作品8から作品20にかけては、自費出版という形で世に送り出されています。

マニャールの音楽様式は、当時のフランス人作曲家の流れの中に位置づけられますが、独自の個性を持っています。交響曲には随所にマーラーを思わせる瞬間があり、また、コラールを効果的に使用していることから、一部の熱烈な支持者からは「フランスのブルックナー」と呼ばれることもあります。ただし、ブルックナーがフランク以前から循環形式を用いていたのに対し、マニャールの循環形式の扱いは、フランク楽派に近いものです。4曲ある交響曲のうち、『第2番』は形式的には長調とされていますが、実際には教会旋法が用いられており、その響きに独特の深みを与えています。作品数そのものはそれほど多くありませんが、室内楽曲は彼の全作品の中で重要な位置を占めています。弦楽四重奏曲、ピアノと木管のための五重奏曲、ピアノ三重奏曲、ヴァイオリン・ソナタ、チェロ・ソナタなどが含まれ、特にダンディやフランク楽派の作曲家の中でも、その気宇壮大な構想、劇的な性格、そして峻厳でありながら深い抒情性を秘めた寒色系の響きによって独自の存在感を放っています。これらの特徴は、彼の生真面目な性格や、ダンディを通じて敬愛したベートーヴェンやワーグナーからの影響が反映されたものと考えられています。オペラにおいては、ワーグナーのライトモティーフ技法が巧みに取り入れられています。

1914年に第一次世界大戦が勃発すると、マニャールは妻と2人の娘を安全な場所に避難させましたが、自身はオワーズ県バロンにある邸宅を守るために残りました。ドイツ兵が邸宅に侵入した際、彼は銃を持って抵抗し、発砲して敵兵を射殺したと言われています。ドイツ兵は激しく応戦し、最終的に邸宅に火を放ちました。マニャールはこの火災によって命を落とし、邸宅の焼け跡から彼の遺体が発見されました。この悲劇により、彼の未出版の楽譜、具体的には初期のオペラ『イヨランド』、オペラ『ゲルクール』の2つの場面、そして新作の歌曲などが失われました。しかし、1908年に『ゲルクール』の公演を実現させた指揮者のロパルツは、焼失した部分を驚異的な記憶力で再構成し、1931年にこの作品の再演を成功させました。

マニャールの生涯は短く、決して華々しいものではありませんでしたが、その峻厳で内省的な音楽は、フランス音楽史において独自の光を放っています。父の名声に頼らず、自らの芸術を追求し続けた孤高の精神と、悲劇的な最期は、彼の作品に深みと重みを与えています。発表された作品は多くありませんが、交響曲、オペラ、そして特に充実した室内楽など、それぞれが彼の誠実な芸術家としての姿勢を物語っています。

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