アルベロベッロのトゥルッリ

アルベロベッロのトゥルッリ：南イタリアのユニークな遺産

アルベロベッロのトゥルッリは、イタリア南部プーリア州のアルベロベッロに存在する、ユネスコの世界遺産に登録された建造物群です。1996年に「ID 787」として登録されたこの場所は、この地方特有の伝統的な家屋である「トゥルッリ」が密集して立ち並ぶ景観が特徴です。

登録の背景

アルベロベッロのトゥルッリは、アイア・ピッコラ地区とモンティ地区という2つの地区に集中しており、その総数は1500軒以上にも及びます。これらのトゥルッリは、白い壁に円錐形の石積みの屋根を持つ独特な構造をしており、「トゥルッリ」が複数集まった景観を「トゥルッリ」と呼びます。16世紀半ばから約100年の間に、開拓農民によって多く建設されました。主な建材は石灰岩で、表面には漆喰が塗られています。

この地域では、かつてはトゥルッリが広く見られましたが、時代の流れとともにその景観は失われていきました。しかし、アルベロベッロでは多くのトゥルッリが現存し、20世紀後半には観光地としても知られるようになり、1996年に世界遺産として登録されました。現在でも住居や店舗として利用されており、その文化的価値と景観は大切に守られています。

特徴

家屋

トゥルッロの主な建材は、この地方で豊富に採れる石灰岩です。伝統的な工法では、石材の間にモルタルなどの接合剤を使用せず、石灰岩の切石を積み上げる乾式石積み工法で建設されます。しかし、表面には漆喰が塗られ、外気を遮断しつつ室内の明るさを保つ役割を果たしています。また、内壁と外壁の間には土砂が詰められ、天水を濾過して地下水槽に導くなど、気候風土に適した工夫が施されています。

トゥルッロは基本的に「部屋1つ屋根1つ」という構造をしており、玄関や廊下はなく、扉を開けると直接部屋に通じます。ただし、大規模なトゥルッロの中には2階建てのものもあり、2階の床や階段は木で作られています。屋根は上部ほど細くなる特徴的な形状で、石灰岩の切石を積み上げて作られ、しばしば神話的・宗教的なシンボルが描かれています。

市街地の様子

トゥルッリが集まった市街地の景観は、とんがり屋根がひしめき合い、「小人が集まったような」または「おとぎの国のような」と形容されることがあります。アイア・ピッコラ地区には1030軒、モンティ地区には590軒のトゥルッロが現存しています。アイア・ピッコラ地区は観光地化されており、土産物店などが立ち並びますが、モンティ地区は住宅街として地元住民の生活が営まれています。

歴史

アルベロベッロの位置するイトリア地方では、先史時代から石灰岩を住居の建材として用いる方法が発展してきました。14世紀にはこの地域はコンヴェルサーノ伯の荘園となり、他の地域から農民が移住してきました。16世紀半ばにはモンティ地区に40軒のトゥルッリが存在した記録があります。

17世紀には、領主であるジャンジローラモ2世が製粉所やパン屋、宿屋を建設し、町の拡大が始まりました。農民の家は解体しやすく、再建もしやすいように簡易に建設することが命じられていました。これは、反抗的な農民への懲罰や、家屋に応じた税を納める必要があった領主側の課税対策が目的でした。

1797年、住民たちの運動により、この村はアックアヴィーヴァ家の封建支配から解放され、以降、住民たちが自ら町を治める権利を勝ち取ったことを記念する祭りが毎年行われています。

観光

アルベロベッロには年間100万人以上の観光客が訪れ、通りにはトゥルッリを利用した店が立ち並んでいます。

登録基準

アルベロベッロのトゥルッリは、以下の世界遺産登録基準を満たしています。

(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠であること。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例であること。
* (5) ある文化を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例であること。

まとめ

アルベロベッロのトゥルッリは、その独特な建築様式と歴史的な背景から、世界的に貴重な文化遺産として認識されています。この地域を訪れる人々は、その美しい景観と歴史に触れ、忘れられない体験をすることでしょう。

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