アルベロベッロ

アルベロベッロは、イタリア南部プッリャ州に位置する人口約1万1000人のコムーネ（基礎自治体）です。この街の最大の特徴は、16世紀から17世紀にかけて農民によって建てられた「トゥルッロ」と呼ばれる独特な家屋群が、今もなお数多く残っていることです。トゥルッロは、石灰岩を積み上げて作られた円錐形の屋根を持つ白い壁の家で、その景観はまるで絵本の世界のようです。

アルベロベッロの歴史とトゥルッロ

アルベロベッロの歴史は、14世紀にターラント公がこの地域の領主権をコンヴェルサーノ伯に与えたことに始まります。当時、この地域は無人の土地と記録されており、コンヴェルサーノ伯の荘園となってから、農民が開拓のために移り住んできたと考えられています。16世紀初頭には、コンヴェルサーノ伯アンドレア・マッテオ3世の推進により、本格的な定住が始まりました。彼は、約40家族の農民をこの地に入植させ、収穫物の1割を納める義務を課しました。その際、農民たちが建設したのが、トゥルッロでした。

トゥルッロは、この地域で産出される石灰岩を主な建材としています。モルタルなどの接合剤を使わずに石を積み上げる乾式工法で建てられており、表面には漆喰が塗られています。この建築方法は、当時の領主が、税を逃れるために、解体しやすい家屋を農民に建てさせたという説があります。実際に、税の徴収の際に、家屋を解体して徴収を妨害したという記録も残っています。また、漆喰で塗られた屋根のある家が課税対象であったため、徴税人が来る際に住民が屋根を取り壊したという話も伝えられています。

17世紀には、ジャンジローラモ2世がこの地に製粉所、パン屋、宿屋を建てさせ、町の拡大が始まりました。彼は、狩猟のためにこの地に滞在することが多く、この地域は彼の重要な拠点となりました。

アルベロベッロのトゥルッリ群と世界遺産

アルベロベッロのトゥルッリ群は、その独特な景観と歴史的価値から、1996年にユネスコの世界遺産に登録されました。世界遺産の対象となっているのは、アイア・ピッコラ地区とモンティ地区です。アイア・ピッコラ地区には1030軒、モンティ地区には590軒のトゥルッロが現存しており、その美しさは訪れる人々を魅了します。

現在でもアルベロベッロの約4分の1の建物がトゥルッリであり、その景観は、ヴァッレ・ディトリア地方のトゥルッリ文化の中心地として重要な役割を果たしています。アルベロベッロ以外にも、かつては周辺地域でもトゥルッリが多く見られましたが、その多くは失われました。そのため、アルベロベッロに残るトゥルッリ群は、非常に貴重な存在と言えるでしょう。

アルベロベッロの姉妹都市と友好都市

アルベロベッロは、世界各地の都市と姉妹都市・友好都市提携を結んでいます。姉妹都市としては、ギリシャのアイイ・アナルギリ、イタリアのロメンティーノ、日本の白川村、トルコのハッラーンなどがあります。

特に、日本の白川村は、合掌造りの集落が世界遺産に登録されているという点でアルベロベッロと共通しており、互いに交流を深めています。また、ハッラーンは、古代都市の遺跡が残る場所で、日干し煉瓦で作られたトゥルッリに似た構造の住居が残っています。これらの提携は、文化や歴史的なつながりを通じて、相互理解を深めることを目的としています。

アルベロベッロのその他の施設

アルベロベッロには、「ラ・カーサ・ロッサ」と呼ばれる歴史的な施設があります。この建物は、もともと農業学校として使われていましたが、第二次世界大戦中は抑留施設や刑務所として利用されました。その後、難民収容施設としても使われ、現在ではショアーと戦争を記憶する博物館として公開されています。

アルベロベッロへのアクセス

アルベロベッロへは、鉄道を利用するのが便利です。スド・エスト鉄道のバーリ＝マルティーナ・フランカ＝ターラント線が、アルベロベッロ駅に乗り入れています。

まとめ

アルベロベッロは、その独特な景観と歴史的な背景から、世界中から多くの観光客が訪れる魅力的な街です。トゥルッロと呼ばれる伝統的な家屋群は、この地で暮らす人々の生活や文化を今に伝えており、歴史と文化に触れる旅をしたい方にとっては、最適な場所と言えるでしょう。世界遺産に登録されているこの美しい街を、ぜひ一度訪れてみてください。

もう一度検索