アルマンド・ゲブーザ

アルマンド・エミリオ・ゲブーザは、モザンビークの激動の時代を駆け抜けた政治家です。1943年にモザンビーク北部で生まれ、20歳でモザンビーク解放戦線（FRELIMO）に参加。ポルトガルからの独立を目指した独立戦争（1964年 - 1974年）において、ゲブーザは重要な将軍、そして指導者としての地位を確立しました。

独立後のマシェル政権下では内務大臣を務め、物議を醸した「2420」と呼ばれる命令を発令。これは、ポルトガル人居住区の住民に対し、24時間以内の退去と、持ち出し荷物を20kgまでに制限するというものでした。また、都市部の失業者を農村部に移動させる「生産作戦」も実施しましたが、これは国民からの支持を得られませんでした。

1986年、サモラ・マシェル大統領が航空機事故で急逝すると、ゲブーザは事故調査委員会の一員となります。1992年には、FRELIMO代表として、対立していた反政府組織モザンビーク民族抵抗運動（RENAMO）との和平交渉に臨み、ローマ和平協定に署名。和平実現に大きく貢献しました。

1990年代以降、モザンビークは社会主義的な経済政策を転換し、国営企業の民営化を推進します。ゲブーザは、この流れの中で建設業、輸出業、水産業などで成功を収め、実業家としての才能を開花させました。2002年にはFRELIMOの大統領候補に選出され、翌年には党の事務局長に就任。着実に政治家としての階段を上っていきます。

2004年12月、ゲブーザは大統領選挙に出馬し、63.7％の得票率で当選。2005年2月2日に第3代モザンビーク大統領に就任しました。しかし、この選挙は国際監視団から、選挙管理委員会の公平性と透明性に疑義があるとして非難も受けています。

大統領としてのゲブーザは、経済成長と貧困削減に取り組みました。また、インフラ整備にも力を入れ、2009年にはザンベジ川に架かる橋が完成。この橋は「アルマンド・エミリオ・ゲブーザ橋」と命名され、彼の功績を称えています。

2009年10月には大統領選挙で再選を果たし、2期目を務めました。2008年には、アフリカ開発会議 (TICAD) 参加のため来日し、愛媛県松山市を訪問。市民レベルの国際協力がモザンビークとの繋がりを生み出しました。2015年に大統領を退任し、フィリペ・ニュシが大統領の座を引き継ぎました。

ゲブーザは、独立戦争の英雄から、和平交渉の立役者、そして実業家、大統領へと、様々な顔を持つ人物です。その政治手腕には賛否両論ありますが、モザンビークの現代史において、重要な役割を果たした人物であることは間違いありません。

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