アルメニアン・ダンス (リード)

アルメニアン・ダンス

『アルメニアン・ダンス』は、アメリカの作曲家アルフレッド・リードが作曲した吹奏楽曲であり、アルメニアの民族音楽を基にした壮大な組曲です。この作品は、《アルメニアン・ダンス パート1》と《アルメニアン・ダンス パート2》の2つに分かれており、それぞれが複数の楽章から構成されています。全4楽章からなるこの組曲は、アルメニアの豊かな音楽文化と、吹奏楽のダイナミックな響きが見事に融合した名曲として、世界中の音楽ファンを魅了し続けています。

概要

アルメニアの比較音楽学者であるコミタス・ヴァルダペットが収集したアルメニア民謡が、この作品の重要な素材となっています。《パート1》は、5つのアルメニア民謡をメドレー形式で演奏する単一楽章構成です。一方、《パート2》は、アルメニア民謡を基にした3つの楽章から成り立っています。《パート1》と《パート2》を合わせると、全4楽章の組曲となりますが、楽譜はそれぞれ異なる出版社から出版されており、その理由は公式には明らかにされていません。

日本での受容

日本において『アルメニアン・ダンス』は、作曲から40年以上経った今でも非常に人気が高く、プロの楽団だけでなく、学校やアマチュア団体も演奏会やコンクールで取り上げることが多いです。特に《パート1》は、その変化に富んだ曲想が広く支持されており、単独で演奏されることもよくあります。関西で開催される大規模なマーチングイベント『3000人の吹奏楽』では、2010年から毎年、参加者全員で《パート1》が演奏されています。また、三重県内の学生によるミエ・ユース ウインド・オーケストラでも、この曲が毎年演奏されています。

様々な編曲版

『アルメニアン・ダンス』は、様々な編成用に編曲されています。日本人作曲家や編曲家によるものも多く、以下のようなものがあります。

金管バンド版（泉 修 編曲,2005年）
金管バンド版（小泉 貴久 編曲）
オーケストラ版（中原 達彦 編曲,2012年）
吹奏楽 小編成版（三浦 秀秋 編曲,2019年）

その他にも、ホルン10重奏、吹奏楽極小編成版、サクソフォン8重奏版、クラリネット5重奏版、木管8重奏版など、アンサンブル版も多数存在します。

楽曲解説

アルメニアン・ダンス パート1

1972年夏に完成し、サム・フォックス社から出版されました。演奏時間は約11分です。初演は1973年1月10日、ハリー・ベギアン指揮、イリノイ大学吹奏楽団によって行われ、ベギアンに献呈されました。

曲の構成

《パート1》は、5つのアルメニア民謡をメドレー形式で演奏する組曲のような構成となっています。

1. Tzirani Tzar 「杏の木」
コミタスが合唱用に編曲したものを基にしています。金管楽器のファンファーレと木管楽器の走句で始まり、躍動的なメロディーが展開されます。
2. Gakavi Yerk 「ヤマウズラの歌」
コミタス自身の作曲で、ヤマウズラが歩き回る様子が可愛らしく表現されています。クラリネットやオーボエ、フルートのソロが印象的です。
3. Hoy, Nazan Eem 「おーい、僕のナザン」
恋人のために歌う若者の姿を描いた曲で、コミタスが合唱用に編曲したものが基になっています。8分の5拍子という独特のリズムが特徴です。
4. Alagyaz 「アラギャズ山」
アルメニアにあるアラギャズ山を歌った雄大な民謡です。トランペットやユーフォニアムによる旋律が印象的です。
5. Gna, Gna 「行け、行け」
楽しさに満ちた音楽で、全員で力強く演奏する部分や、クラリネットの速いパッセージが特徴的です。

アルメニアン・ダンス パート2

《パート1》から4年後の1978年に、バーンハウス社から出版されました。演奏時間は約22分です。初演は1976年4月、ハリー・ベギアン指揮、イリノイ大学吹奏楽団によって行われ、ベギアンに献呈されました。

曲の構成

《パート2》は、3つの楽章から構成されています。

1. 第1曲 Hov Arek 「農民の訴え」（風よ、吹け）
民謡「農民の訴え」を基にした曲で、農民が風に悩みを吹き飛ばしてほしいと祈る様子を描いています。イングリッシュホルンによる悲しげな旋律が印象的です。
2. 第2曲 Khoomar 「結婚の舞曲」
コミタスが編曲したものを基に、アルメニアの結婚式の様子を描いた楽しげな舞曲です。8分の6拍子が特徴的です。
3. 第3曲 Lorva Horovel 「ロリの歌」（ロリ地方の農耕歌）
農民の労働歌を基にした大規模な楽章です。劇的な悲痛な響きから始まり、8分の5拍子のエキゾチックなメロディを経て、再び速いテンポに戻り華麗に終わります。


『アルメニアン・ダンス』は、アルメニアの豊かな民族音楽を基に、吹奏楽の魅力を最大限に引き出した、非常に完成度の高い作品です。その美しい旋律とダイナミックな展開は、聴く人を魅了し、吹奏楽のレパートリーとして欠かせない存在となっています。

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