アルメニア州

アルメニア州：帝政ロシア時代の行政区画

アルメニア州は、1828年から1840年までロシア帝国がカフカス地方に設置した行政区画です。その領域は、現在のアルメニア共和国の中央部、トルコのウードゥル県、アゼルバイジャンのナヒチェヴァン自治共和国にほぼ相当し、約2万1千平方キロメートルの面積を有していました。州都はエリヴァニでした。

歴史

アルメニア州は、1828年の第二次ロシア・ペルシャ戦争の結果、トルコマーンチャーイ条約によってガージャール朝からロシア帝国に割譲されたエリヴァン・ハン国とナヒチェヴァン・ハン国の旧領土に設置されました。同年3月21日に創設され、イヴァン・パスケーヴィチには「エリヴァニ伯」の称号が授与されました。

1829年には、博物学者のフリードリヒ・パルロットがハチャトゥル・アボヴィアンらを伴い、アララト山に初登頂しています。この登山は、アコリの聖イアコフ修道院を拠点として行われました。

州の中心都市エリヴァニは、東アルメニア最大の都市であり、人口は約1万3千人。その半数以上がアルメニア人でした。エチミアジンは、全アルメニアのカトリコスが置かれ、アルメニア人にとって歴史的、文化的、精神的な中心地でした。

アルメニア州の統治は、ロシア人軍人2名、アルメニア人とムスリムの代表各1名、そして執行・財務・経済・司法を担当する3名の顧問からなる特別委員会によって行われました。ムスリムの代表は、トルコ人、タタール人（アゼルバイジャン人）、ペルシア人、クルド人の中から選出されました。

1840年4月10日、ニコライ1世の勅命によりアルメニア州は廃止され、1841年1月1日に発効しました。その大部分はグルジノ・イメレチア県に再編されましたが、ナゴルノ・カラバフなどはカスピ州に編入されたため、住民の間で不満が生じました。民族的・宗教的な帰属意識を無視した行政区画の再編は、各地で反発を招きました。しかし、1849年にはエリヴァニ県が再び設置されています。

人口

アルメニア州設置当時、アルメニア人が占める割合は全人口の約3分の1でした。14世紀半ばまで、アルメニア人は東アルメニアで多数派でしたが、ティムール朝の征服によりテュルク系民族が定住し、イスラム教が広まりました。イラン王朝の支配下では、ムスリムの入植が進められました。

ロシア帝国の統治下に入ると、ロシア政府はイランとオスマン帝国の領内に住むアルメニア人に対し、アルメニア州への帰還や移住を奨励しました。その結果、アルメニア人の人口は大幅に増加し、1832年までに約4万5千人が州内で定住しました。

アルメニア州の歴史は、帝国の拡大、民族の移動、そして文化の交錯が複雑に絡み合った、カフカス地方の歴史を象徴する出来事の一つと言えるでしょう。

もう一度検索