ウードゥル県

ウードゥル県

ウードゥル県は、トルコ東アナトリア地方に位置し、県都をウードゥルとする県です。その歴史は古く、様々な民族や文化が交錯する地域です。北西をカルス、南西をアール県に囲まれ、東部ではアルメニアやアゼルバイジャンのナヒチェヴァン自治共和国と国境を接しています。

名称の由来

ウードゥルの名称は、テュルク系のオグズ族の一支族である「ウードゥロール」に由来するとされています。彼らはアナトリア各地に広がり、同名の地名が他の地域にも見られます。

地理

ウードゥル県は、トルコ最高峰のアララト山の麓に広がる平野部に位置します。この地域はトルコで最も温暖な地域の一つであり、綿花の栽培が可能です。アルメニアとの国境にはアラス川が流れ、豊かな自然環境を形成しています。

歴史

この地への人類の定住は紀元前4000年頃に遡ります。紀元前800年頃にはウラルトゥ王国の一部となり、その後も様々な勢力がこの地を支配しました。4世紀にはセレウコス朝やサーサーン朝の影響を受け、646年にはイスラムのアラブ勢力に統治されます。11世紀からはテュルク系民族の支配が始まり、オスマン朝とペルシア帝国の間で長きにわたり争奪戦が繰り広げられました。その結果、現在の県の領域の大部分はペルシアに割譲され、エリヴァニ・ハン国の統治下に入りました。

19世紀にはロシア・ペルシア戦争の結果、北部がロシアの支配下に入り、アルメニア州やエリヴァニ県の一部となりました。南部はオスマン朝が保持しましたが、露土戦争でロシアに割譲されました。

第一次世界大戦後、この地は弱体化した帝政ロシアの支配を離れ、アルメニア第一共和国の管轄下に入りました。しかし、トルコ共和国軍がこの地を占領し、ソ連とのカルス条約によってウードゥルはトルコ領となりました。

歴史的な戦乱の中で、アルメニア人もこの地に多く居住していましたが、トルコ・アルメニア戦争を経てその人口は激減しました。

住民

現代のウードゥル県には、クルド人、トルコ人、アゼルバイジャン人など、多様な民族が暮らしています。また、イランの春の祭りであるノウルーズも盛大に催されています。農村部が中心ですが、周辺の県と比較して人口密度が高く、人口は緩やかに増加傾向にあります。

下位自治体

ウードゥル県には以下の4つの自治体があります。

ウードゥル（Iğdır）
アラルク（Aralık）
カラコユンル（Karakoyunlu）
トゥズルジャ（Tuzluca）

名所

ゾルの商隊宿: アルメニア人の建築家によって建てられたと考えられている歴史的なキャラバンサライです。ウードゥル南西に位置し、ゾル村に因んで名付けられました。かつては教会もあったとされます。
スルメリ城: 中世アルメニアの町があった場所で、ウードゥルから東のトゥズルジャへ向かう道沿いにあります。しかし、国境地域であるため、現在では訪問が制限されています。

ウードゥル県は、その歴史と地理的特性から、多様な文化が交錯する地域であり、豊かな自然と歴史的遺産が魅力の場所です。

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