アル・ボラト

アル・ボラト：ダヤン・ハーンの息子、その生涯と子孫

アル・ボラト（生年不詳 - 没年不詳）は、16世紀のモンゴルを統治したダヤン・ハーンの息子の一人です。彼は、モンゴル語の史料ではАрболд（Arbold）、中国語の史料では阿爾博羅特と記されています。また、アル＝ボーラ（Al buγura）という別名を持ち、漢文史料では「那力不剌台吉」とも呼ばれていました。

概要

アル・ボラトは、ダヤン・ハーンと正妻マンドフイ・ハトンの間に生まれた末子でした。モンゴルの年代記によれば、兄たちは皆双子として生まれてきたのに対し、アル・ボラトだけは一人で生まれたとされています。

彼が父であるダヤン・ハーンから分封された部族については、史料によって記述が異なります。『蒙古源流』ではホーチト部、『アルタン・トプチ』ではチャガン・タタル、『恒河の流れ』などではアスト部が挙げられています。しかし、漢文史料の記述などを考慮すると、アスト（とヨンシエブ）を相続したという説が有力視されています。

アル・ボラトには、アジュとシラという二人の息子がいました。しかし、彼らは互いに殺し合ってしまったため、「アストとヨンシエブ」は没収されるという悲劇に見舞われました。その後、アストとヨンシエブは、ダヤン・ハーンの三男であるバルス・ボラトの息子、ボディダラが領有することとなり、アル・ボラトの家系の手を離れることになりました。

子孫

アル・ボラトの子孫は以下の通りです。

アジュ・タイジ（那出台吉） - 哈不慎を領する
シラ・タイジ（失剌台吉） - 哈不慎を領する
ボケ・タイジ（不克台吉） - ウイグチン（委兀慎／Uyiγučin）を領する
モルン・タイジ（莫藍台吉） - ダリ・ミンガン（打剌明安／Dari mingγan）を領する

アル・ボラトの生涯は、部族の相続を巡る史料の異同、息子たちの争いによる領地の喪失など、様々な出来事に彩られています。彼の足跡は、モンゴルの歴史における一側面を照らし出しています。

参考文献

岡田英弘訳注『蒙古源流』刀水書房、2004年
森川哲雄「チャハル・八オトクとその分封について」『東洋学報』58巻、1976年
* 吉田順一『アルタン・ハーン伝訳注』風間書房、1998年

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