預言者のモスク

預言者のモスク：イスラム教第二の聖地

預言者のモスク（マスジド・アンナバウィ）は、サウジアラビアのメディナに位置するイスラム教の礼拝堂であり、イスラム教徒にとってマッカに次ぐ第二の聖地です。このモスクは、預言者ムハンマドの霊廟が安置されている場所でもあり、イスラム世界において特別な意味を持っています。

歴史

預言者のモスクの歴史は、622年にムハンマドがメディナに移住（ヒジュラ）したことに始まります。当初、ムハンマドの住居は、約51メートル四方の中庭をレンガ製の壁で囲んだ簡素なものでした。この建物には、ムハンマドの妻たちの部屋が9つありましたが、ムハンマド個人の部屋はありませんでした。屋根は部分的に設けられ、マッカとエルサレムの方向のみを覆っていました。この建物は、モスクとしてだけでなく、軍事作戦本部、捕虜収容所、病院としても機能しました。ムハンマドは、3段の壇上で説教を行い、これが現代のモスクに設置されているミンバルの起源となりました。

ムハンマドの死後、632年に彼の遺体がモスクに埋葬されました。706年、ウマイヤ朝のカリフであるワリード1世がモスクの大規模な改修を命じ、5年の歳月をかけて既存の建物を完全に解体し、新たなモスクを建設しました。この改修により、モスクは大幅に拡大され、より豪華なものとなりました。その後、預言者のモスクは少なくとも2度の火災に見舞われましたが、1483年にはマムルーク朝のスルタン、アシュラフ・カーイトバーイによって再建され、オスマン帝国時代には修復されて現在の姿に至っています。

現在見られる10本のミナレット（尖塔）を持つ白亜の巨大な建物は、1995年に完成しました。マッカのマスジド・ハラームと同様に、100万人を収容することが可能であり、ハッジ（巡礼）の際には多くのイスラム教徒が訪れます。

2016年7月には、モスク付近で自爆攻撃が発生し、治安部隊員が死傷するという事件も起きました。この事件は、多くの礼拝客が訪れていたラマダン明けのイード直前に発生し、世界中に衝撃を与えました。

特徴

預言者のモスクは、幾度にもわたる修復と改築を経て、現在の姿となりました。ウマイヤ朝時代には、モスクの規模は約100メートル四方だったと考えられています。これは、改築前の約50メートル四方に比べて、面積で4倍もの大きさです。中庭は、南北に5列、西に4列、東に3列の柱廊で囲まれており、柱廊の柱にはアーチが施されていました。天井には金色の彫刻が施され、柱は主に大理石でできていました。礼拝室の壁にはクルアーンの引用が刻まれ、ビザンチン建築の影響を受けたモザイクによる装飾が施されていました。また、後のモスクで必ず見られるミフラーブも、このモスクで初めて採用されたとされています。礼拝時にイマームが立つミンバルは、ムハンマド時代には3段でしたが、後に9段になりました。モスクの高さは約13メートル、四隅には高さ25メートル以上のミナレットが建てられました。

ギャラリー

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脚注

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参考文献

羽田正『モスクが語るイスラム史』中央公論社〈中公新書〉、1994年。ISBN 4-12-101177-5。

関連項目

ヒジュラ
* ウマル・イブン・ハッターブ：第2代正統カリフであり、預言者のモスクに埋葬されています。

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