アレクサンダー・リピッシュ

アレクサンダー・リピッシュの業績と生涯

アレクサンダー・リピッシュ（1894年11月2日 - 1976年2月11日）は、ドイツの流体力学者として航空機設計の分野で多大な影響を与えた人物です。特に無尾翼機やデルタ翼機、地面効果翼機の設計において顕著な業績を残し、数多くの革新的な航空機の開発に携わりました。中でも、世界初のロケット推進による迎撃戦闘機であるMe163の設計は、彼の名声を確立する大きな要因となりました。

生い立ち

リピッシュはミュンヘンのバイエルン王国に生まれました。幼少期から航空機に興味を持ち、1909年にはオーヴィル・ライトのデモ飛行を目撃しています。本来は父親の跡を継いで美術学校に進む予定でしたが、第一次世界大戦の勃発が彼の進路を大きく変えました。戦争中は陸軍に従軍し、空中撮影員や測量員として飛行する機会を得ました。

キャリアの始まり

戦争が終わると、リピッシュはツェッペリン社での仕事を通じて航空機設計にのめりこみ、特に無尾翼機の研究に関心を持ち始めました。1921年には、彼の最初の無尾翼機設計である「リピッシュ・エスペンラウプ E-2グライダー」が生産され、これが後の約50種に及ぶ無尾翼機の開発への道を開きました。彼の業績は高く評価され、彼はグライダー研究機関の技術部門長として活躍しました。

デルタ翼機の設計

リピッシュの設計スタイルは、無尾翼機からデルタ翼機へと移行します。1931年から1939年にかけて、彼は5機のデルタ翼機を製作し、さらには政府や民間企業からの関心が薄い中でも独自の位置を築いていきました。特にデルタ IVおよびデルタ Vは、後に再編成された研究機関であるドイツ滑空機研究所（DFS）の下での主要な成果物となりました。

Me163の開発とその後

1939年には、リピッシュはメッサーシュミット社に派遣され、ロケットエンジンを搭載した無尾翼機の設計に取り組みました。それが後のMe163となり、革新的な技術ではあったものの、実用的には限界がありました。1943年には、より高速飛行の研究を追求するためウィーン航空研究所に移籍しました。この時に、彼はハイデルベルク大学から工学博士号を受け取ることになります。

戦後の活動

第二次世界大戦後の「ペーパークリップ作戦」によりアメリカに渡ったリピッシュは、そこでも航空機設計において重要な役割を果たしました。彼がコンベア社で試作したデルタ翼機9002は、アメリカ空軍においても評価され、XF-92Aという形式名が与えられました。この時期、彼のデザイン理念がアメリカの航空機設計に影響を与え、後のF-102やF-106などのデルタ翼機の開発に寄与しました。

最晩年と功績

1950年代から1960年代にかけて、リピッシュは地面効果翼機の研究へも着手し、独創的な設計を次々と発表しましたが、健康状態の悪化により1964年に職を辞しました。晩年にはリピッシュ・リサーチ社を設立し、再び航空機設計を続けましたが、1976年に彼はシーダーラピッズでこの世を去りました。

リピッシュは航空機のデザインに革命をもたらした技術者であり、彼の作品は今日でも航空業界に多大な影響を与えています。

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