アレクサンデル7世 (ローマ教皇)

アレクサンデル7世（1599年2月13日 - 1667年5月22日）は、ローマ教皇として1655年から1667年まで在位しました。本名をファビオ・キージといい、シエナの名門キージ家の出身です。教皇パウルス5世の大甥にあたります。

生涯と教皇就任

ファビオはシエナ大学で哲学、神学、法学を修めました。1627年にはフェラーラの副教皇大使としてキャリアをスタートさせ、その後マルタの巡察師、ケルンの教皇大使を歴任しました。外交手腕を買われ、1648年のウェストファリア条約の交渉にも教皇庁代表として参加し、三十年戦争後の新秩序構築に貢献しました。

教皇インノケンティウス10世にローマへ呼び戻されると枢機卿に任命され、国務長官の地位に就きました。1655年の教皇選挙では、80日以上におよぶ難航の末、スペイン枢機卿団の支持を得て教皇に選出され、アレクサンデル7世を名乗りました。当初、教皇庁内のネポティズム批判を考慮し、親族のローマ訪問を禁じていましたが、次第に親族を重用し、キージ家への便宜を図るようになりました。

文化と芸術への貢献

アレクサンデル7世は政治よりも学問や芸術を愛し、自らラテン語詩をパリで発表しています。建築にも関心が深く、ローマの都市整備を推進しました。特に有名なのは、建築家ベルニーニをパトロンとして支援し、サンタ・マリア・デル・ポポロ教会の装飾や、サン・ピエトロ大聖堂のペトロのカテドラの完成に尽力したことです。サン・ピエトロ広場を囲む二重の柱廊は、彼の在位中に完成した重要な建築物の一つです。

クリスティーナ女王の改宗と歓迎

在位中には、スウェーデンのクリスティーナ女王がカトリックに改宗し、王位を放棄してローマに移住するという出来事がありました。教皇は彼女を歓待し、ローマでの生活を支援しました。

外交とフランスとの対立

外交面では、フランスとの衝突が頻繁に起こりました。フランス枢機卿団は当初からキージの教皇就任に反対しており、ルイ14世のアドバイザーであったマザラン枢機卿は、フランス教会の自立を主張し教皇庁と対立しました。マザラン没後も両者の対立は続き、教皇領であったアヴィニョンがフランスに奪われる事態となりました。1664年には、教皇がルイ14世に謝罪する形でピサ協定が結ばれました。また、1640年にポルトガルがスペインからの独立を求めた際には、教皇はスペインを支持しました。

宗教政策とイエズス会

アレクサンデル7世はイエズス会を強く支持し、ヴェネツィアがオスマン帝国の侵入に対して教皇に支援を求めた際には、イエズス会員の追放解除を求めました。また、ジャンセニスムを批判し、イエズス会を擁護しました。1653年にコルネリウス・ヤンセンの著作『アウグスティヌス』に対する誤謬指摘の撤回を求めたフランス司教団の訴えを却下し、教皇庁とフランスの関係を悪化させました。教皇はジャンセニスムの恩寵と人間の堕落に関する考え方を批判し、1665年の教書でフランス司教団に忠誠を求めましたが、これも論争を呼びました。

その他の業績

教皇は1661年にミサ典書のフランス語訳を禁止し、1665年にはフランシスコ・サレジオを列聖しました。また、学問を愛し、バチカンに収蔵されている歴史資料を学者に公開しました。

アレクサンデル7世は、学問と芸術を愛した教皇として、また外交や宗教政策において重要な役割を果たした人物として、歴史に名を残しています。

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