アレクサンドリア十字軍

アレクサンドリア十字軍：経済的動機が主導した略奪戦

アレクサンドリア十字軍は、1365年10月にキプロス王ピエール1世が主導し、エジプトのアレクサンドリアを短期間占領した事件です。ヴェネツィア共和国や聖ヨハネ騎士団の支援を受けましたが、従来の聖地奪還を目的とした十字軍とは異なり、経済的な動機が強く影響していました。

歴史的背景

1362年から1365年にかけて、ピエール1世は十字軍遠征のために軍を集め、各国に資金援助を求めました。当時、エジプトのマムルーク朝がキプロス島への遠征を計画していたため、ピエール1世は先制攻撃を仕掛けることにしました。ヴェネツィア共和国が海軍を提供し、十字軍戦士はロドス島に集結し、ロドス騎士団と合流しました。

1365年10月、ピエール1世は165隻の船団を率いてロドス島を出発し、アレクサンドリアに上陸しました。十字軍は3日間アレクサンドリアを略奪し、数千人の住民を殺害、5000人を奴隷としました。モスク、寺院、教会、図書館などが焼き払われるなど、街は荒廃しました。

しかし、マムルーク朝の本軍に対する防衛体制を構築できないと判断した十字軍は、10月12日にアレクサンドリアから撤退しました。ピエール1世はアレクサンドリアを拠点とする構想を持っていましたが、家臣たちは略奪に満足し、キプロスへの帰還を主張しました。ピエール1世は最後までアレクサンドリアに残り、マムルーク兵が街に入るのを見届けてから撤退しました。ヨーロッパの王侯からは、ピエール1世だけが真の十字軍戦士だと評価されました。

経済的動機

オランダの歴史家ヨ・ファン・ステーンベルゲンは、アレクサンドリア十字軍の主要な動機は経済的なものだったと指摘しています。当時、東地中海最大の貿易拠点であったアレクサンドリアを没落させることで、ピエール1世はキプロス島のファマグスタを中継貿易拠点として発展させることを目指していました。宗教的動機は二の次だったと考えられています。

戦術

ファン・ステーンベルゲンによれば、同時代のムスリム側の記録から、十字軍の優れた陽動作戦が明らかになっています。アレクサンドリア守備隊が最初に西側の海岸に上陸してきた部隊に注意を引きつけられている間に、十字軍の本隊は別の場所から上陸し、墓地に潜んでいました。これにより、十字軍はアレクサンドリア守備隊を挟み撃ちにし、混乱に陥れることに成功しました。

アレクサンドリア十字軍は、宗教的な熱意だけでなく、経済的な野心と巧妙な戦術が組み合わさった事件でした。短期間の占領と略奪は、アレクサンドリアの街に大きな被害をもたらし、その後の地中海貿易の勢力図に影響を与えました。


参考
* History Avenue: Sack of Alexandria, 1365 (http://historyavenue.com/alexandria/)

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