アレクサンドリア港攻撃

アレクサンドリア港攻撃：第二次世界大戦におけるイタリア海軍の奇襲

アレクサンドリア港攻撃は、第二次世界大戦中の地中海戦域において、1941年12月18日から19日にかけてイタリア海軍がイギリス海軍に対して行った特殊作戦です。この作戦は、イタリア海軍の潜水艦と人間魚雷を使用して、アレクサンドリア港に停泊中のイギリス艦隊を攻撃するという大胆なものでした。

背景

1940年6月、イタリアは枢軸国側として第二次世界大戦に参戦しましたが、ギリシャ侵攻で大敗を喫し、その軍事力の弱体化は明らかでした。この状況を打開するため、ドイツが地中海や北アフリカへ介入することになり、戦況は複雑化しました。

1941年後半、エジプトのアレクサンドリアはイギリス海軍の地中海艦隊の拠点であり、特にクイーン・エリザベス級戦艦はイタリア海軍にとって脅威でした。イタリア海軍は以前にも人間魚雷による奇襲を計画しましたが、母艦の潜水艦が撃沈されて失敗に終わっていました。また、地中海の中央に位置するマルタ島は連合国にとって重要な拠点であり、ここから北アフリカ戦線の枢軸国軍に対する補給路を攻撃していました。

マルタの存在は、枢軸国にとって補給線を大きく迂回させる必要があり、ロンメル将軍のドイツアフリカ軍団は常に物資不足に苦しめられていました。このような状況下で、イタリアは状況を打開するために、特殊作戦部隊SLCによるアレクサンドリア攻撃を計画しました。

作戦経過

1941年12月3日、イタリア潜水艦シィーレはラ・スペツィアを出航し、沖合でSLC3隻を移載しました。SLCの要員は空路でレロス島に移動し、潜水艦での長期航海による体調不良を避けていました。SLCの各チームには以下の目標が設定されました。

SLC221：ルイージ・ドゥランド・デ・ラ・ペンネ大尉、エミリオ・ビアンキ二等潜水兵曹 - 戦艦「ヴァリアント」
SLC222：アントニオ・マルチェリア造船大尉、スパルタコ・スケルガート潜水一等兵曹 - 戦艦「クイーン・エリザベス」
* SLC223：ヴィンチェンツォ・マルテロッタ兵技大尉、マリオ・マリーノ二等潜水兵曹 - 空母（第二目標はタンカー）

12月14日、「シィーレ」はアレクサンドリアへ向けて出撃しました。12月18日の日没後、3隻のSLCが発進し、イギリス海軍の警戒をかいくぐりながら港内への侵入を試みました。

ペンネのSLCは「ヴァリアント」に到達しましたが、潜水時に海底に沈下し、ビアンキが気絶するなどのトラブルに見舞われました。ペンネは単独で爆薬を設置し、その後二人とも捕らえられましたが、尋問には一切答えませんでした。一方、マルチェリア組は「クイーン・エリザベス」への爆薬設置に成功しました。

マルテロッタ組は目標の空母を発見できなかったため、タンカー「サゴナ」を攻撃目標としました。

攻撃予定時刻の直前、ペンネは艦長に面会し、艦が沈没することを警告しました。その後、5時45分に「サゴナ」、6時6分に「ヴァリアント」、6時10分に「クイーン・エリザベス」で爆発が起こりました。

マルチェリア組は逃走に成功しましたが、後に逮捕されました。マルテロッタ組も上陸後に逮捕されました。

結果と影響

この攻撃により、「ヴァリアント」と「クイーン・エリザベス」の2隻の戦艦は深刻な損傷を受け、長期間戦線を離脱することになりました。また、タンカー「サゴナ」と駆逐艦「ジャーヴィス」も被害を受けました。

イギリス軍は戦艦の被害を隠蔽しようとしましたが、ドイツ軍の偵察により作戦の成功は露見しました。この結果、地中海のパワーバランスは枢軸国側に大きく傾き、北アフリカ戦線におけるロンメル将軍の部隊への補給が安定しました。

この作戦の成功は、イギリス海軍にも大きな刺激を与え、後の特殊潜航艇「チャリオット」や「X艇」の開発へとつながり、ドイツ戦艦「ティルピッツ」への攻撃作戦のヒントとなりました。

関連作品

この作戦を題材にした映画として、『潜航電撃隊』（1958年）と『巨艦いまだ沈まず』（1962年）が公開されています。

この作戦は、第二次世界大戦における特殊作戦の成功例として、その後の海戦における戦術に大きな影響を与えました。特に人間魚雷や特殊潜航艇といった兵器の有効性を実証し、後の作戦における重要な要素となりました。

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