アレクサンドル・アバザー

アレクサンドル・アゲーエヴィチ・アバザーの生涯と業績

アレクサンドル・アゲーエヴィチ・アバザー（1818年7月24日 - 1895年1月26日）は、帝政ロシアの政治家であり、アレクサンドル2世の治世下で大蔵大臣を務めました。彼は、ロシアの経済改革に尽力した人物として知られています。

生い立ちと初期のキャリア

アバザーは1818年、トヴェリ県（現在のノヴゴロド州）でモルダヴィア貴族の家系に生まれました。彼の家は、農奴解放以前から製糖業を営んでおり、裕福な家庭環境で育ちました。1839年にはペテルブルク帝国大学法学部を卒業し、その後軍務に就きカフカースでの戦闘に参加しましたが、1847年に退役しました。

退役後は、対外経済事情の研究や自領の経営改善に取り組みながら、自由主義的、進歩的な貴族や工場主のサークルに加わりました。1857年には、改革派官僚のパトロネスとして知られるエレーナ・パヴロヴナ大公妃に仕え、経済改革を推進する立場となりました。

官僚としてのキャリア

1865年、アバザーは大蔵省評議会議員に就任し、翌年には国家評議会にも選出されました。1871年には会計検査官を経て、1874年から1880年まで国家評議会経済部会長を務めました。これらの役職を通して、彼は財政政策や経済改革に関する幅広い知識と経験を積みました。

大蔵大臣としての改革

1880年、アバザーはミハイル・ロリス＝メリコフ内相の推薦により大蔵大臣に就任しました。彼は、ロリス＝メリコフが提唱していた塩税の廃止を皮切りに、鉄道事業債権の創設や関税税率の段階的引き上げなどの政策を実施しました。アバザーは、ロリス＝メリコフ内相やニコライ・ブンゲ大蔵次官とともに、納税制度、通貨制度、鉄道建設、財政など多岐にわたる社会経済改革プログラムを推進し、ロリス＝メリコフが目指した立憲改革を支持しました。

アレクサンドル2世暗殺と改革の頓挫

アバザーの改革は、アレクサンドル2世の暗殺によって大きな転換期を迎えます。1881年3月1日、アレクサンドル2世は、ロリス＝メリコフの改革案を承認したまさにその日、「人民の意志」のソフィア・ペロフスカヤの指揮下にあったグリネビツキーによる爆弾テロによって命を落としました。

新帝アレクサンドル3世は、ロリス＝メリコフの改革案を白紙に戻し、コンスタンチン・ポベドノスツェフが起草した勅令によって、皇帝専制の不動性を改めて宣言しました。この結果、アバザー、ロリス＝メリコフ、陸相ドミトリー・ミリューチンは、1881年5月4日に辞職し、改革は頓挫することとなりました。

その後と晩年

1891年から1892年にかけて、アバザーは再び国家評議会経済部会長を務めましたが、1892年にルーブルの下落に先立ち、地位を利用して100万ルーブルの利益を上げたとされ、1893年3月10日にすべての公職から退きました。彼は1895年1月26日にニースで死去し、サンクトペテルブルクのアレクサンドル・ネフスキー大修道院内のチーフヴィン墓地に埋葬されました。

アバザーは、ロシア帝国の経済改革に尽力した一方で、その改革の多くが政治的な混乱によって頓挫した悲劇的な人物として歴史に名を残しています。彼の政策は、その後のロシア経済に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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