アレクサンドル・イズヴォリスキー

アレクサンドル・ペトローヴィチ・イズヴォリスキー（1856年3月18日 - 1919年8月16日）は、帝政ロシアの外交官、政治家であり、ピョートル・ストルイピン内閣で外務大臣を務めました。

経歴

イズヴォリスキーは、1894年から1906年にかけて、バチカン、セルビア、バイエルン、日本、デンマークの各公使を歴任しました。日本公使時代には、義和団の乱に乗じて、日露両国による大韓帝国の分割を日本に提案したという記録が残っています。1906年にはストルイピン首相の下で外務大臣に就任し、親英、親独の外交路線をとり、ストルイピン体制と改革を外交面から支えました。

特に、イズヴォリスキーは英露間の関係改善に尽力し、1907年の英露協商締結に成功しました。日露戦争敗北後のロシアにとって、この協商はイラン、アフガニスタン、チベットにおける両国の勢力範囲を定める重要なものでした。また、イズヴォリスキーはロシア黒海艦隊のボスポラス海峡通過権獲得にも尽力しました。これにより、長年の懸案であった英露両国の対立関係は解消され、ドイツの3B政策に対抗するための協力体制が構築されることになりました。

しかし、1908年、イズヴォリスキーはオーストリア外相アロイス・レクサ・フォン・エーレンタールとの間でボスニア・ヘルツェゴビナをめぐる外交交渉に臨んだ際、オーストリア・ハンガリー帝国による同地域の併合を阻止できず、外交的敗北を喫しました。このボスニア・ヘルツェゴビナ併合は、ロシア国内の汎スラヴ主義や、セルビアの大セルビア主義を刺激し、バルカン半島の緊張を高めることになりました。また、オーストリア国内においては、民族問題を一層複雑化させ、後の第一次世界大戦の遠因の一つとなりました。

1910年9月に外相を解任されたイズヴォリスキーは、その後フランス大使に任命されました。ロシア革命勃発後もフランスに留まり、亡命生活を送った後、同地で生涯を終えました。その政治手腕は評価される一方で、ボスニア・ヘルツェゴビナ問題における失策は、第一次世界大戦へと繋がる火種になったとも言えるでしょう。

イズヴォリスキーは、激動の時代を生きた外交官として、その功績と失敗の両面において、後世に大きな影響を与えました。

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