アレクサンドル・オドエフスキー

アレクサンドル・イワノヴィチ・オドエフスキー（1802年12月8日 - 1839年8月27日）は、ロシア帝国の貴族であり、詩人として知られています。彼は、チェルニーヒウ公国を起源とする由緒ある貴族の家系に生まれました。若い頃から文学に関心を持ち、アレクサンドル・グリボエードフ、アレクサンドル・ベストゥージェフ、コンドラチイ・ルイレーエフといった当時の文学者たちと交流を深めました。彼らは、当時の感傷的でメランコリックな文学潮流に反対し、共に新しい文学の可能性を模索しました。

1824年、オドエフスキーは近衛騎兵連隊に勤務しましたが、ルイレーエフやベストゥージェフに誘われ、秘密結社に参加します。1825年12月、彼はデカブリストの乱に積極的に関与した罪で逮捕されました。この反乱は、専制政治に対する貴族や知識人たちの抵抗運動であり、オドエフスキーもその中心人物の一人でした。反乱の失敗後、彼は位階と勲章を剥奪され、シベリアの鉱山で12年間の徒刑を宣告されました。

シベリアでの過酷な生活を送る中、オドエフスキーは詩作を始めました。彼の作品の中でも特に有名なのが、1827年に書かれた「プーシキンに答える」です。これは、プーシキンが流刑中のデカブリストたちに捧げた詩「シベリアへ送る詩」に応えて書かれたもので、彼の反骨精神と希望が込められています。1837年、刑期を終えたオドエフスキーは、ニジニー・ノヴゴロド竜騎兵連隊の一兵卒としてコーカサスに派遣されました。そこで、ミハイル・レールモントフやニコライ・プラトノヴィチ・オガリョフと親交を深めますが、マラリアに罹患し、1839年にその地で亡くなりました。彼の死を悼み、レールモントフは「A・I・オドエフスキーの想い出」という詩を捧げています。

オドエフスキーの作品は、彼の人生経験と密接に結びついています。叙情詩では、社会的な不正義や個人の苦悩が描かれ、叙事詩では、歴史的な出来事や英雄的な人物が題材に取り上げられています。

彼の主な作品には以下のようなものがあります。

叙情詩

「プスコフの使者」
「チタからペトロフスキー鉱山への護送の途上で」(1830年)
「スラヴの娘たち」(1830年)

叙事詩

「ヴァシリコ」(1829-1830年)

オドエフスキーの生涯は、ロシアの歴史における変革期を象徴しており、彼の作品は、当時の社会情勢や人々の意識を反映しています。彼の詩は、プーシキンやレールモントフといった同時代の文学者たちにも影響を与え、ロシア文学の発展に貢献しました。彼の作品は、今日でも多くの人々に読まれ、その文学的価値は高く評価されています。

参考文献

P・クロポトキン『ロシア文学の理想と現実』（1984年、岩波文庫)
N･I･トゥルゲーネフ『亡命者の手記』（1979年、恒文社）
* アレクサンドル・ゲルツェン『ロシアにおける革命思想の発達について』（1950年、岩波文庫）

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