アレクサンドル・ザハルチェンコ

アレクサンドル・ザハルチェンコ：ドネツク人民共和国の指導者

アレクサンドル・ウラジーミロヴィチ・ザハルチェンコ（1976年6月26日 - 2018年8月31日）は、ウクライナからの独立を宣言した分離主義勢力「ドネツク人民共和国」（DPR）の元首長であり、閣僚評議会議長（首相格）を務めた人物です。

生い立ちと初期の生活

ザハルチェンコは、1976年6月26日にウクライナSSRのドネツクで生まれました。工科大学を卒業後、鉱山電気技師として働いていましたが、後に鉱業ビジネスを始めました。内務省の法科協会にも在籍しましたが、アルコール依存症のため中退しています。私生活では、妻ナタリアとの間に4人の息子がいました。

政治キャリア

ザハルチェンコは、ビジネスマンとしての活動の傍ら、地域党の活動にも関わっていました。2010年には、ハリコフに設立された親ロシア派民兵組織「オプロート」のドネツク支部長に就任しました。

2014年4月16日、ザハルチェンコはオプロートのメンバー20人を率いて、ドネツク市議会の事務局を占拠し、ドネツクの状況に関する住民投票を要求しました。その後、5月16日に「ドネツクの軍司令官」に任命され、ウクライナ中央政府に対する反乱で主導的な役割を担うようになりました。同年7月にはウクライナ政府軍との戦闘で腕を負傷しています。2014年8月下旬には、ドネツク防衛省から少将に昇進しています。

ザハルチェンコは2014年8月7日にアレクサンドル・ボロダイの後任として首相に就任し、その後、同年11月のドネツク首長選挙で勝利しました。ボロダイは、ザハルチェンコの首相就任は、ロシア政府が「蜂起が草の根現象であることを西側に見せようとする」戦略の一環であったと述べています。

2014年9月には、ドンバス戦争の平和協定であるミンスク議定書のドネツク側の主任交渉者を務めました。また、2015年2月には、ミンスク2平和協定にも合意しました。ザハルチェンコは、この協定を「ルガンスクおよびドネツク人民共和国の大きな勝利」と称しました。しかし、彼はその後、ウクライナ当局が協定の条件を遵守しない場合は、ハリコフを奪取し、デバルツェボのウクライナ軍を破壊すると警告しました。さらに、デバルツェボ地域内の停戦にも固執しないと述べています。

政治的立場

ザハルチェンコは、自身の政治的立場として、年金が「ポーランドよりも高い」国づくりを目標として掲げていました。ドネツクは豊富な資源を持っているため、これは実現可能だと主張していました。また、同性愛嫌悪的な発言もしており、「民主主義の名のもとに、家族が二人の父親や二人の母親を持つことは受け入れられない」と述べています。死刑を支持する立場も表明していました。

2016年後半には、英国を征服することが「ロシアの黄金時代」の到来を告げるとも語っています。また、国民ボルシェビキ党の活動家であるロシアの作家ザハール・プリレピンは、ザハルチェンコがウクライナで最も人気のある政治家トップ5の一人であり、ウクライナ大統領に選ばれ得る人物であると述べました。

人権侵害

ドンバス戦争中、ドネツク人民共和国では強制失踪の事例が多数発生しています。ザハルチェンコは、軍が毎日最大5人の「ウクライナの破壊分子」を拘束していると述べていました。2014年12月までに、約632人が分離主義勢力によって違法に拘束されていると推定されています。フリーランスのジャーナリスト、スタニスラフ・アシエフは2017年6月に拉致され、ドネツク政府は当初彼の所在を知らないと否定していましたが、後にスパイ容疑で拘留中であることを認めました。アムネスティは、ザハルチェンコの解放を要求していましたが、アシエフは2018年7月時点でまだ拘留中であり、ハンガーストライキを開始していました。

死亡

ザハルチェンコは、2018年8月31日にドネツクのカフェ「セパル」で発生した爆弾爆発により死亡しました。ドネツクとロシア連邦はウクライナ政府当局を非難しましたが、キエフの当局者はこれらの非難を否定し、ザハルチェンコの死はドネツクの内乱の結果であると述べました。

ザハルチェンコの葬儀と慰霊祭は、2018年9月2日にドネツクオペラ・バレエ劇場で執り行われました。3日間の追悼期間が宣言され、領土での新学年度の開始は9月4日まで延期されました。式典には、南オセチアの大統領やクリミアの首長、ロシアの下院議員などが参列しました。

反応

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はザハルチェンコの家族に哀悼の意を表し、彼の死を「卑劣な殺人」と呼びました。ロシア外務省は、ザハルチェンコの死についてウクライナを非難し、全面的な惨事の危機に駆り立てていると主張しました。クリミア共和国の住民は、シンフェロポリの中央広場で彼の肖像画に花を供え、その死を悼みました。

ルガンスク人民共和国の首長代行は、ザハルチェンコの死を悼み、「アレクサンドル・ザハルチェンコが掲げた闘争の旗は決して落ちることはない」と述べました。彼はまた、ドンバス地域は「ザハルチェンコの殺害を許さない」と強調しました。

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