アレクセイ・ラトマンスキー

アレクセイ・ラトマンスキー：世界的なバレエ界の巨匠

アレクセイ・オシポーヴィチ・ラトマンスキーは、1968年、ロシアのレニングラード（現サンクトペテルブルク）に生まれました。幼少期からバレエに親しみ、ボリショイ・バレエ学校で本格的な訓練を受けます。ピョートル・ペストフやアレクサンドラ・マルケーエヴァといった名教師に師事し、高い技術を習得しました。

1986年、ボリショイ・バレエ学校を卒業後、キエフでダンサーとしてのキャリアをスタートさせます。その後、ウクライナ国立バレエ団、ロイヤル・ウィニペグ・バレエ団、デンマーク王立バレエ団と、世界的に著名なバレエ団でプリンシパル・ダンサーとして活躍しました。

ダンサーとしての華々しい経歴に加え、ラトマンスキーは卓越した振付家としても知られています。1998年、ジョージア国立バレエ団のために振り付けた『日本の夢』で、振付家としての才能が開花。この作品は、ロシア演劇人同盟のゴールデン・マスク賞を受賞するなど、高く評価されました。

ラトマンスキーの振付の特徴は、大規模なバレエカンパニーのために伝統的な古典バレエ作品を再解釈し、現代的な視点を取り入れながら再演する点にあります。2002年にはマリインスキー・バレエのために『シンデレラ』全3幕を初めて手がけました。

2004年から2008年にかけては、ボリショイ・バレエの芸術監督を務め、同バレエ団の改革に大きな貢献を果たしました。在任中には、『明るい小川』、『ボルト』、『海賊』、『パリの炎』など、多くの古典バレエ作品を再演し、ボリショイ・バレエを世界的なバレエ界のトップカンパニーとして確固たる地位を築き上げました。この功績により、ボリショイ・バレエ団は2005年と2007年にロンドン批評家協会から「Best Foreign Company」に選出されています。ラトマンスキー自身も、『明るい小川』の振付でナショナル・ダンス・アワードを受賞しました。

ボリショイ・バレエ芸術監督退任後、ラトマンスキーはアメリカン・バレエ・シアター（ABT）のファースト・アーティスト・イン・レジデンスに就任しました。ABTでは、『ドニエプル川の岸辺で』や『七つのソナタ』などのオリジナル作品を発表し、高い評価を獲得しています。また、ニューヨーク・シティ・バレエ団（NYCB）のために『ロシアの季節』や『コンチェルトDSCH』といった作品も制作しています。

2011年には、プロコフィエフの『ロメオとジュリエット』を振り付け、カナダ国立バレエ団によって世界初演されました。この作品はニューヨーク・タイムズの評論家アラステア・マコーレーから「今日クラシック・バレエを専門とする中でも最も才能に恵まれた振付家である」と絶賛されています。

近年では、マリウス・プティパによる古典バレエ作品を復刻・再演することに力を入れており、『パキータ』、『眠れる森の美女』、『白鳥の湖』などの名作を現代に蘇らせました。これらの作品は、世界中のバレエファンを魅了し続けています。

ラトマンスキーは、1988年から2017年にかけて、数多くのオリジナル作品を発表しており、その幅広い表現力と高い芸術性は世界中から称賛されています。主な作品として、『La Sylphide-88』、『日本の夢』、『シンデレラ』、『明るい小川』、『ロメオとジュリエット』、『パキータ』などが挙げられます。

2022年、ロシアによるウクライナ侵攻が始まると、ラトマンスキーは家族を危険に晒している現状や、ロシア文化を取り巻く状況について強い懸念を表明しました。ロシア政府の政治活動や侵略行為に反対する立場を明確にしています。

ラトマンスキーの功績は、数々の賞によって裏付けられています。2005年のブノワ賞、2007年のゴールデン・マスク賞、そして2013年のマッカーサー・フェロー（「天才賞」）受賞など、その才能は世界的に認められています。彼の芸術は、今後もバレエ界に多大な影響を与え続けることでしょう。

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