マリインスキー・バレエ

マリインスキー・バレエ：ロシアの誇るバレエの殿堂

マリインスキー・バレエは、世界五大バレエ団の一つとして名高く、ロシア・サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場を本拠地とするバレエ団です。その歴史は200年以上に及び、ロシアバレエ、ひいては世界バレエ史に計り知れない影響を与えてきました。

歴史：帝政ロシアから現代まで

マリインスキー・バレエの起源は、18世紀初頭、フランス人振付師ジャン・バティスト・ランデがサンクトペテルブルクに設立した帝室舞踊学校に遡ります。当時、バレエはまだロシアに伝来したばかりでしたが、帝室舞踊学校の設立はロシアにおけるバレエ発展の大きな一歩となりました。

その後、1783年にはエカチェリーナ2世の勅令により、オペラとバレエ専用のボリショイ劇場（サンクトペテルブルク）が建設され、マリインスキー・バレエの活動拠点となります。19世紀に入ると、フランスのロマンティック・バレエの影響を受けつつ、マリウス・プティパという偉大な振付師の活躍により、マリインスキー・バレエは古典バレエの黄金時代を築き上げました。プティパとチャイコフスキーの黄金コンビによって生み出された『眠れる森の美女』、『くるみ割り人形』、『白鳥の湖』といった三大バレエは、マリインスキー・バレエの代表作として世界中で愛されています。

1886年には老朽化したボリショイ劇場（サンクトペテルブルク）から、新たに建設されたマリインスキー劇場へ活動を移しました。この劇場は現在もマリインスキー・バレエの本拠地として使われています。

19世紀後半から20世紀初頭にかけては、マリインスキー・バレエ出身者を中心に構成されたバレエ・リュスが、パリを中心に世界中で成功を収めました。このバレエ・リュスは、従来のクラシック・バレエに新しいステップや民族舞踊を取り入れ、モダン・バレエの誕生に貢献しました。しかしながら、ロシア革命（1917年）を機に、多くのダンサーが国外に亡命し、バレエ・リュスの活動は終焉を迎えます。

ソビエト連邦時代には、マリインスキー・バレエはキーロフ・バレエと改称され、政治的な影響を受けながらも、高いレベルのバレエ芸術を維持し続けました。しかし、この時代には、厳しい検閲により上演作品が制限されることもありました。ソビエト連邦崩壊後の1992年、マリインスキー・バレエは元の名称に戻り、現在に至っています。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、マリインスキー・バレエにも大きな影響を与えました。侵攻に反対するダンサーの退団などが発生した一方、国内では通常通り上演を続けています。

バレエのスタイルと伝統

マリインスキー・バレエは、ロシア帝国時代から続く伝統を大切にしながら、高い技術と洗練された表現力によって知られています。特に、群舞であるコール・ド・バレエの完成度は高く評価されており、ソビエト連邦時代にはダンサーの容姿やスタイルまで統一されていたほどです。

著名なダンサーと振付師

マリインスキー・バレエは、ミハイル・フォーキン、アンナ・パヴロワ、ヴァーツラフ・ニジンスキー、ジョージ・バランシン、ルドルフ・ヌレエフ、ナタリア・マカロワ、ミハイル・バリシニコフなど、数多くの伝説的なダンサーや振付師を輩出しており、これらのダンサーたちの活躍が世界バレエ界に大きな影響を与えました。近年では、日本人ダンサーの石井久美子が入団したことでも話題となりました。

マリインスキー・バレエの未来

歴史と伝統を受け継ぎながら、常に進化を続けるマリインスキー・バレエ。政治的・社会的状況の変化にも揺るがない高い芸術性を維持し、世界中のバレエファンを魅了し続けていくことでしょう。

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