アレッサンドロ・ペルティーニ

アレッサンドロ・ペルティーニ：反ファシズムの英雄、イタリアを導いた大統領

アレッサンドロ・ペルティーニ（通称サンドロ・ペルティーニ）は、1896年9月25日に生まれ、1990年2月24日に没した、イタリア社会党の著名な政治家です。彼はイタリア共和国の第7代大統領を務め、その政治的信念と行動は、イタリア現代史に深く刻まれています。

生い立ちと初期の政治活動

ペルティーニは、サヴォナ県ステッラの地主の家に生まれました。第一次世界大戦には当初反対の立場を取りましたが、最終的には陸軍に入隊し、中尉として従軍。その戦功により勲章を授与されました。戦後、ペルティーニはファシズムへの抵抗運動に身を投じ、政治犯として投獄されます。獄中では、同じく投獄されていたアントニオ・グラムシと交流を深め、その思想に影響を受けました。

反ファシズム闘争の指導者

第二次世界大戦末期、ペルティーニは共産党のルイジ・ロンゴらと共に、北イタリア国民解放委員会 (CLNAI) の指導者として活動しました。彼は、ベニート・ムッソリーニらファシズム指導者らを裁くための戦争犯罪法廷の設置を決定。1945年4月25日には、反ファシストとして、またイタリア北部を占領していたドイツに対する一斉蜂起を指揮し、ファシズムを終焉へと導きました。ムッソリーニの処刑後、その遺体の見せしめに対し、当時の首相フェルッチョ・パッリから苦言を呈されたというエピソードも残っています。

戦後、ペルティーニはピエトロ・ネンニと共に社会党の再建に尽力し、1945年から1年間は書記長（党首）を務めました。その後、1968年から1976年まで下院議長を務めています。

大統領として

1978年、ロッキード事件に絡んでジョヴァンニ・レオーネ大統領が辞任したことを受け、ペルティーニは大統領に就任しました。当初、大統領候補としては有力視されていませんでしたが、社会党からの要請と共産党の支持を取り付け、第16回投票で圧倒的な支持を得て当選しました。

大統領在任中、イタリアは極左・極右によるテロが頻発し、社会不安が高まっていました。1978年には教皇ヨハネ・パウロ1世が急死、暗殺の疑いも浮上しました。1981年にはP2事件が発生し、アンブロシアーノ銀行のロベルト・カルヴィ頭取が暗殺されるなど、数々の事件が起こりました。ペルティーニはこれらの事件への対応に尽力しましたが、アンドレオッティ元首相の影響力などにより、困難な状況に直面しました。また、ヨハネ・パウロ1世の後継として、455年ぶりに非イタリア人のヨハネ・パウロ2世が教皇に選出されたのも、ペルティーニの在任中の出来事でした。

ペルティーニは社会正義を掲げ、1982年3月には来日し、鈴木善幸首相と会見後、参議院本会議場で全面核軍縮を訴える演説を行いました。彼はまた、イタリアの組織犯罪、南アフリカのアパルトヘイト、独裁政権、ソ連のアフガニスタン紛争にも反対していました。

死去と遺産

1990年、ペルティーニは93歳で生涯を閉じました。「国民から最も愛された大統領」として、その死はイタリア国民に深く悼まれました。彼の功績を称え、1945年の蜂起を宣言した地であるミラノには、アルド・ロッシの設計による記念碑が建立されています。

人物像

ペルティーニは、ヨハネ・パウロ2世と親交があり、公私にわたり交流を深めていました。彼はあらゆる過激主義に反対し、アルド・モロ前首相やカルロ・アルベルト・ダッラ・キエーザ将軍の暗殺事件を強く非難しました。個人としては無神論者でしたが、宗教に対して深い理解を示していました。また、マラネロのフェラーリ工場を訪問した際、大統領専用車のマセラティ・クアトロポルテで訪れたところ、エンツォ・フェラーリに面会を拒否されたという逸話も残っています（最終的には面会に応じました）。

アレッサンドロ・ペルティーニは、反ファシズムの闘士として、またイタリア国民に愛された大統領として、その名は永遠にイタリアの歴史に刻まれることでしょう。

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