アロウズ・A1

アロウズA1：短期間開発のフォーミュラ1マシン

アロウズA1は、1978年から1979年にかけて活躍したフォーミュラ1マシンです。設計を手掛けたのは、トニー・サウスゲートとデイブ・ウォスという名コンビ。アロウズチームの主力として、数々のレースを戦い抜きました。

誕生の経緯：訴訟と急造

A1の開発には、興味深い背景があります。前モデルであるFA1が、サウスゲートが以前所属していたシャドウの新型マシンDN9と酷似していたため、シャドウから訴訟を起こされたのです。敗訴が濃厚と判断したアロウズチームは、迅速な対応を余儀なくされました。

そこで、わずか50日という驚異的な短期間でA1が開発されたのです。敗訴判決からわずか3日後のことでした。時間的な制約から、基本設計はFA1を踏襲せざるを得なかったものの、細部の改良が加えられています。

A1の特徴：FA1からの進化

A1は、FA1をベースとしながらも、重要な改良が施されています。最も顕著な違いは、サイドポンツーン側面に設けられたスカートです。このスカートは、気流をコントロールするために内側の底面が持ち上げられた独特の形状をしています。また、フロントノーズのオイルクーラー吸気口が2つに分割された点も、FA1とは異なる部分です。これらの改良は、空力性能の向上に貢献したと考えられています。

スペック：信頼のフォード・コスワースエンジン

アロウズA1のパフォーマンスを支えたのは、名門フォード・コスワースDFVエンジンです。

戦績：パトレーゼらドライバーの活躍

1978年シーズン、アロウズA1はリカルド・パトレーゼとロルフ・シュトメレンを擁しました。パトレーゼは予選5位、決勝2位という好成績を残し、チームに貢献しました。一方、シュトメレンは最高位9位と、やや苦戦しました。この年のコンストラクターズランキングは9位、パトレーゼのドライバーズランキングは11位という結果に終わりました。なお、1978年シーズンのアロウズチームの獲得ポイントは、A1とFA1の両方の成績が合計されています。

1979年シーズンは、パトレーゼに加え、ヨッヘン・マスがドライバーとして参戦しました。パトレーゼは予選9位、決勝5位という結果を残しましたが、マスも決勝6位を3回記録するなど健闘を見せました。しかし、この年もコンストラクターズランキングは9位、パトレーゼのドライバーズランキングは11位という結果でした。1979年シーズンのポイントは、A1と後継モデルであるA2の両方の成績が反映されています。

まとめ：短命ながら記憶に残るマシン

アロウズA1は、訴訟という異例の事態から生まれた、短命ながら記憶に残るマシンです。わずか50日という短期間での開発は、チームの技術力と努力の証と言えるでしょう。FA1をベースとしながらも、独自の改良を加えることで、独自の個性を確立しました。短期間の開発にも関わらず、パトレーゼやマスといった名ドライバーによって、F1の歴史にその名を刻んでいます。その活躍は、フォーミュラ1の歴史において重要な一ページを飾るにふさわしいものです。

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