アロディニア

アロディニア：弱い刺激が激しい痛みとなる感覚異常

アロディニアとは、通常であれば痛みを感じないような弱い刺激、例えば軽い触れや温度変化などが、非常に強い痛みとして感じられてしまう感覚異常のことです。別名、異痛症とも呼ばれます。例えば、風が当たるだけでも激痛を感じたり、衣服のわずかな接触で痛みを感じたりといった症状が現れます。この状態は、神経系の機能障害によって引き起こされ、慢性的な痛みを抱える患者さんにとって大きな苦痛となります。

アロディニアの種類

アロディニアには、大きく分けて2つの種類があります。

1. 静的アロディニア: これは、軽い圧迫などの持続的な刺激によって痛みを感じてしまう状態です。痛みは、神経障害のある部位に限定されることが多いのが特徴です。例えば、患部に軽く触れただけでも激しい痛みを感じることがあります。

2. 動的アロディニア: こちらは、皮膚を軽く撫でる、またはこするといった動的な刺激によって痛みを感じてしまう状態です。静的アロディニアと異なり、痛みは患部に限らず、より広範囲に及ぶことがあります。例えば、患部だけでなく、その周囲の皮膚に触れるだけでも痛みを感じる場合があります。

これらの分類は、神経線維の種類と刺激の伝達経路の違いによって区別されます。静的アロディニアは、痛みを伝えるAδ線維とC線維の興奮性が高まることによって起こると考えられています。一方、動的アロディニアは、通常は触覚を伝えるAβ線維の機能異常が関与していると考えられています。

国際疼痛学会の分類では、アロディニアと痛覚過敏は明確に区別されています。アロディニアは、通常痛みを感じない刺激を痛みとして感じるのに対し、痛覚過敏は、通常痛みを感じる刺激をより強く感じることを指します。

アロディニアの原因

アロディニアは、様々な原因によって引き起こされます。代表的なものとしては、以下のものが挙げられます。

神経因性疼痛: 神経系の損傷や疾患によって引き起こされる痛みで、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害などが含まれます。
片頭痛: 脈打つような激しい頭痛を特徴とする疾患で、アロディニアを伴う場合もあります。
線維筋痛症: 全身に慢性的な痛みや疲労感を特徴とする疾患で、アロディニアとの関連性が指摘されています。
がん治療の副作用: 特定のがん治療薬（例えば、ビンクリスチン、パクリタキセル、シスプラチンなど）の投与によって、アロディニアが発生することがあります。

これらの疾患や治療において、神経の損傷や炎症、神経伝達物質の異常などがアロディニアの発症に関与していると考えられています。

まとめ

アロディニアは、通常は痛みを感じない刺激が強い痛みとして感じられる感覚異常です。様々な疾患や治療に関連しており、患者さんのQOL（生活の質）を著しく低下させる可能性があります。アロディニアの症状や原因を理解することは、適切な治療やケアを行う上で非常に重要です。もし、アロディニアの症状に心当たりのある方は、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。

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