アンのクリスマス

『アンのクリスマス』の概要

『アンのクリスマス』は、カナダの著名な作家L・M・モンゴメリが手掛けた短編小説を収めた作品集です。この本は、リア・ウィルムスハーストによって編纂され、1995年に出版されました。『クリスマスとアン、その他のホリデーストーリー』というタイトルのもと、クリスマスや新年に関する様々な物語が一堂に会しているのが特徴です。

出版の背景

リア・ウィルムスハーストは、20世紀初頭にモンゴメリの作品を多くの雑誌に発表していましたが、当時はあまり注目されていませんでした。彼女はその後、これらの作品の目録を整備する作業を行い、本書はその一環として生まれました。収録された短編は、もともとは雑誌のクリスマス号や新年号に載せられるために書かれたものです。また、モンゴメリの名作『赤毛のアン』や『アンの幸福』からも、クリスマスに関連するエピソードが追加されています。

収録されている短編の内容

1. 赤毛のアンのクリスマス
『赤毛のアン』の第25章から再録された物語で、アンを喜ばせるためにマシューが流行の服を買いに行く様子が描かれています。

2. レッド・ビュートのクリスマス
シオドーラは、クリスマスを迎えることができないという不安を抱えています。彼女は叔母の家で暮らしているが、叔父の死によって生活が厳しくなっています。

3. 仲直り
クリスマスの時期にノーマン叔父の家を訪れると、思わぬ家族の事情が待ち受けています。駅で妹が事故に遭ったとの知らせを受け、姉妹は駅長のアドバイスをもとに行動に出ます。

4. シリラおばさんのバスケット
シリラおばさんは、田舎風の食べ物を詰め込んだ大きなバスケットを持って甥夫婦の家へ向かいます。しかし、クリスマスの列車に揺られ、雪が降りしきる中で心配になります。

5. <もみの木荘>のクリスマス
恵まれた家庭の子供たちが、本当のクリスマスの楽しさとは何かを考え、他者に良いクリスマスを提供しようと試みます。

6. ミス・エイヴィス
大切な家族を持つことがないナニーは、炉辺荘でのクリスマスの光景を目の当たりにし、忘れられた優しい人を思い出すストーリーです。

7. クロリンダの贈りもの
クロリンダは、経済的な理由から夏の病気で贈り物を用意できないことを悲しみますが、真の贈り物の意味を学びます。

8. キャサリンとアンのクリスマス
『アンの幸福』のエピソードを再録した短編で、アンがキャサリンをグリーン・ゲイブルズに招いたクリスマスの物語です。

9. ぼんやり先生のおかげで
グラント家の子供たちは貧しい生活を強いられ、クリスマスに何も買ってもらえません。ぼんやりとした先生の招待が彼らにどのように影響を与えるのかが描かれます。

10. エンダーリー・ロードのサンタクロース
二つの村の子供たちが学校帰りの出来事を通して、仲の悪い間柄を乗り越えようとする物語です。

11. スティーヴンとアレクシーナ
無一文になった兄妹が、伯父からの手紙で久しぶりの再会の期待に思いを馳せるエピソードです。

12. クリスマスの思いつき
仲良しの五人が、それぞれの事情で故郷に帰れずにクリスマスを過ごそうとする計画から広がる心温まる物語。

13. ジョーゼフ一家のクリスマス
貧しいジョーゼフ家の八人の子供たちが互いに贈り物を用意する様子と、思わぬ来客の影響を描写します。

14. リチャードおじさんと元旦のディナー
口をきかない伯父を驚かせるために、台所に立ち料理をするプリシーの奮闘が語られます。

15. アイダのニューイヤー・ケーキ
アイダが母から贈られたフルーツケーキを通じて、新年を祝おうとするストーリー。

16. バーティの新年
体の弱い従弟を思いやりながら、寒さの中で感謝と優しさを提供し合うエピソードです。

これらの物語は、クリスマスという特別な時期に家族や友人、そして他者への愛や思いやりを描き出し、読む人の心を豊かにしてくれます。日本語訳は1996年に片岡しのぶによって行われ、暮しの手帖社から出版されています。

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