アンガス・チャールズ・グレアム

A・C・グレアム (1919-1991) は、20世紀後半におけるイギリスを代表する中国学者にして哲学者です。ウェールズに商人の息子として生まれ、幼少期には家族と共にマレーシアで過ごしました。オックスフォード大学コーパス・クリスティ・カレッジ卒業後は神学を専攻したものの、後に棄教。第二次世界大戦中は、日本語を駆使し、通訳として従軍しました。

戦後、[ロンドン大学]]東洋アフリカ研究学院]に進学し、[[中国学を専攻。1949年に首席でB.A.を取得、1953年には二程の研究でPh.D.を取得しました。その後、SOASで講師を経て教授に就任、1984年には名誉教授となりました。SOAS以外にも、香港大学、イェール大学、ミシガン大学、コーネル大学、シンガポールの東アジア哲学研究所、台湾の国立清華大学、ブラウン大学、ハワイ大学など、世界各地の大学で教鞭をとり、国際的な活躍を見せました。

グレアムの研究は多岐に渡ります。『荘子』に関する文献批評や哲学的な考察を含む訳注、墨家や名家の中国論理学、列子、鶡冠子、二程といった中国思想家の研究、中国語学・文献学、唐詩の訳注など、幅広い分野にわたる成果を残しました。さらに、ウィトゲンシュタインらの影響を受けた非哲学史的な著作も発表しており、西洋哲学史やデリダの思想にも精通していたことが窺えます。1989年に発表された『Disputers of the Tao』は、彼の代表作として知られています。

学術的な貢献において、グレアムはロジャー・T・エイムズやベンジャミン・I・シュウォルツと並び称される主要な中国思想学者の一人として、高い評価を受けています。彼の著作は中国語に翻訳されていますが、日本語訳はまだ存在しません。2018年には、彼の業績を記念した論文集『Having a Word with Angus Graham』がカリーン・デフォールトとロジャー・T・エイムズによって編纂・刊行されました。

グレアムは1979年にスタニスラス・ジュリアン賞を受賞、1981年にはイギリス学士院フェローに選出されるなど、数々の栄誉に輝きました。中国の学者、李学勤とは1981年のグレアムの訪英以降、交流がありました。

A・C・グレアムは、東洋と西洋の知恵を繋ぎ、多様な視点から中国思想を深く掘り下げた、稀有な中国学者でした。彼の研究は、現代の中国哲学研究に多大な影響を与え続け、その功績は高く評価されています。彼の幅広い学問的関心と、国際的な活躍は、後世の研究者にとって、常に刺激と示唆に富むものとなるでしょう。彼の著作は、中国思想研究における重要な資料として、今後も世界中の研究者によって読み継がれていくことでしょう。

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