アンジェラ・メリチ

アンジェラ・メリチ

（Angela Merici、1474年頃 - 1540年）

概要

カトリック教会の修道女、教育者として知られ、特に女子修道会であるウルスラ会の創立者として歴史に名を残しています。従来の女子修道会が、世俗から離れた場所で祈りや労働を行う観想生活を主としていた時代に、社会に出て積極的に女子の信仰教育を行うという、当時としては非常に革新的な活動を展開した人物です。

生涯

アンジェラ・メリチは、1474年頃、北イタリアのブレシア近郊にあるデゼンツァーノ・デル・ガルダという町の近く、ガルダ湖畔の農家に生まれました。比較的裕福な家庭であったと伝えられています。幼い頃から信仰心が篤く、隠遁生活を送る人々の清貧で敬虔な生き方に憧れを抱いていました。実際に一度、隠遁者のような生活を試みようと家を出たことがありますが、伯父によって連れ戻されたという逸話が残っています。

彼女の幼少期は度重なる不幸に見舞われました。10歳の時に両親を相次いで失い、さらに13歳になる頃には姉も亡くしています。これらの辛い経験を経て、アンジェラはフランシスコ会第三会に入会しました。これは、修道院に入って共同生活を送るのではなく、一般社会の中で修道者のような禁欲的で信仰に根ざした生活を送る人々が集まる団体です。アンジェラは世俗にありながらも、献身的な祈りと奉仕の生活を送る道を選びました。

ある時、アンジェラはガルダ湖沿岸の町を訪れた際、そこに暮らす子供たちの教育が行き届いていない現状を目の当たりにし、強い衝撃を受けました。特に女子の教育の機会が少ないことに心を痛め、彼女たちの教育の必要性を痛感するようになります。これが、彼女が後に教育活動に深く関わる大きな契機となりました。

アンジェラは、同じフランシスコ会第三会に属する志を同じくする女性たちと共に、子供たちのための教育活動に関する具体的な計画を立て始めました。当初、その活動は故郷に近い農村地域を中心に行われていましたが、やがてブレシアのような都市部へと活動範囲を広げていきました。しかし、当時のイタリアは戦乱によって社会が混乱しており、彼女たちの活動も様々な困難に直面することになります。

このような厳しい状況下で、アンジェラは教育活動だけでなく、平和の実現にも積極的に関わりました。敵対し合う貴族同士の間に入って対話を促し、和解のために尽力するなど、社会の安定に貢献しました。その平和を願う真摯な姿勢と行動は高く評価され、神聖ローマ帝国の皇帝カール5世をはじめ、各地の領主たちからも敬意をもって迎えられたと言われています。

56歳を迎える頃、アンジェラはこれまでの自らの人生と活動を深く省み、女子の信仰教育を目的とする新しい形態の団体を設立することが、神から与えられた自身の特別な使命であると確信しました。そして、信仰教育を中心とする女性たちの集まりを設立するに至ります。

この新しい団体は、当初は修道会ではなく、社会生活を送る一般信者の女性たちによる自立的な集まりとして発足しました。アンジェラは、その精神的な保護者として、初期キリスト教時代の伝説的な殉教者である聖ウルスラを選びました。これが、後に団体が「ウルスラ会」と呼ばれるようになる名称の由来となります。当時のカトリック教会における女子の奉献生活は、修道院の厳格な規則の下、外部との接触を極力絶った観想的な生活を送ることが一般的でした。それに対し、アンジェラが創設した団体は、社会に出て積極的に教育活動を行うという点で、既存の女子修道会とは一線を画す、画期的な存在でした。

アンジェラ・メリチは、生前からその質素で敬虔な人柄と、困難な状況下でも揺るぎない信仰に基づいて人々に尽くす姿から、多くの人々から聖人のように慕われました。しかし、彼女自身は常に謙遜であり、あくまで神に仕える者としての素朴な生き方を貫いたと伝えられています。1540年にブレシアで死去しました。

アンジェラの死後、彼女が設立した団体はさらに発展を遂げ、女子への一般教育をも含む活動を行う修道会へと成長していきました。

死後長い年月を経た1808年に列聖され、カトリック教会の聖人として崇敬されています。

関連項目

聖ウルスラ
女子教育

出典

クリストバル・バリヌエボ著『改訂新版 ミサの前に読む聖人伝』（サンパウロ、2013年）

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