アンソニー・ドーソン

アンソニー・ドーソン（Anthony Dawson, 1916年10月18日 - 1992年1月8日）は、英国スコットランドのエディンバラで生まれた俳優です。身長は188センチメートルと大柄で、時にはトニー・ドーソン（Tony Dawson）やアントニー・ドーソン（Antony Dawson）といった名義でクレジットされることもありました。日本語のカタカナ表記では、アンソニー・ドースンやアンソニー・ドウソンといった揺れが見られます。

古い資料や過去のメディアでは、イタリアの映画監督であるアントニオ・マルゲリーティと混同されることがしばしばありましたが、これは全くの別人です。マルゲリーティ監督は、アンソニー・ドーソンあるいはアンソニー・M・ドーソンという変名を使用していた時期があったため、このような誤解が生じました。実際に、1983年に日本コロムビアから発売されたVHSソフト『アドベンチャー・アーク/アポロンの秘宝』のジャケットにおいても、両者が混同されていた例があります。

俳優としての彼は、主に悪役として強い印象を残しました。特に有名なのは、アルフレッド・ヒッチコック監督のサスペンス映画『ダイヤルMを廻せ!』や、初期のジェームズ・ボンド映画『007 ドクター・ノオ』で演じたデント教授役です。また、『007 ロシアより愛をこめて』や『007 サンダーボール作戦』では、悪の組織スペクターの首領エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド役で出演していますが、素顔は画面に映っていません。

日本での公開作品は比較的少ないものの、イギリスでは1990年代初頭まで映画やテレビドラマで精力的に活動しました。特に、1950年代から1980年代末にかけては、盟友ともいえるテレンス・ヤング監督の作品に10本以上起用され、存在感のある脇役や端役を多数演じています。

1960年代の初め頃からは、当時のヨーロッパ映画製作の中心地であったイタリアのローマに生活の拠点を移し、活動の幅を広げました。この時期には、ステュワート・グレンジャーやレックス・バーカーといった多くの英語圏の映画スターがイタリアへと活動の場を移していました。彼らが颯爽としたガンマンやスパイを演じる「出稼ぎ」俳優としてイメージされることが多いのに対し、ドーソンは主に渋い脇役や端役、あるいは悪役としてイタリア映画界で活動しました。

イタリアでの主な出演作品としては、『アルデンヌの戦い』（1967年）、『ドクター・コネリー/キッドブラザー作戦』（1968年）、『国際泥棒組織』（1968年）などが挙げられます。彼は、疑似米国映画と呼ばれるジャンルで特に活躍し、マカロニ・ウエスタンにも出演しています。ジュリオ・ペトローニ監督の『新・夕陽のガンマン/復讐の旅』（1967年）では、主人公の仇敵の一人として、胸にトランプの入れ墨をした印象的な役柄を演じました。

英国映画界が不況に陥り企画が通りにくくなっていた当時、テレンス・ヤング監督もまた活況を呈していたイタリア映画界へと活躍の場を移していました。ドーソンは、ヤング監督がイタリアで手掛けた作品にも引き続き出演しています。例えば、史劇ドラマ『残虐の掟』（1967年）、西部劇『レッド・サン』（1971年）、実録マフィア映画『バラキ』（1972年）などで重要な脇役を演じました。また、1980年代に入ってからイタリアで撮影された、統一教会が製作したことで知られる問題作『仁川』（1981年）にも出演しています（この作品は日本ではソフト化されていません）。

イタリア映画以外にも、国際共同製作の作品にも参加しました。旧ユーゴスラビア主導で製作された大規模な戦争映画『ネレトバの戦い』（1969年）ではイタリア軍の将軍役を、西ドイツ映画『デッドロック』（1970年）では殺し屋役を演じるなど、そのキャリアは多岐にわたります。

アンソニー・ドーソンは、その個性的なルックスと存在感で、特にヨーロッパ映画の脇役として確固たる地位を築いた俳優でした。

もう一度検索