アンターナス・スメトナ

アンターナス・スメトナ：リトアニア初代大統領の生涯

アンターナス・スメトナ（1874年8月10日 - 1944年1月9日）は、リトアニアの政治家であり、リトアニア共和国の初代大統領を務めました。彼の生涯は、リトアニアの独立運動と政治の激動期を反映しています。

生い立ちと教育

スメトナは、ウクメルゲ近郊の農村で生まれました。タウイェナイの小学校を卒業後、聖職者を目指してカウナスの神学校に入学を試みますが、後にギムナジウムへ進学。ラトビアのギムナジウムで、ヨナス・ヤブロンスキスやヴィンツァス・クディルカらと出会い、秘密の学生組織に参加。この組織は民族主義的で反ツァーリ主義的な性格を持っていました。学生の抵抗運動を組織したことでギムナジウムを追放されますが、後にサンクトペテルブルクのギムナジウムで学ぶことが許されました。

1897年にギムナジウムを卒業後、スメトナはサンクトペテルブルク大学法学部に入学。大学内のリトアニア人学生組織の議長を務め、リトアニア語の書籍出版と普及に尽力します。逮捕や投獄も経験しながら、1902年に大学を卒業。その後、ヴィリニュス農業銀行で働き、ソフィヤ・ホダカウスカイテと結婚しました。

初期の活動

スメトナはヴィリニュスで、リトアニアの民族主義者グループと関わり、リトアニア民主党に入党。ヴィリニュス大議会における党の代表となります。また、リトアニアの新聞社『ヴィリニュス報知』のスタッフとなり、週刊紙『リトアニアの農夫』を編集。1907年には、『希望』紙の発行と流通を開始し、リトアニア人の連帯を主張しました。リトアニア語の本を発行する会社設立にも関わり、リトアニア相互支援協会ヴィリニュス支部など、多くの協会に所属。ヴィリニュス市内の学校でリトアニア語を教えました。1914年には、隔週刊紙『舵』を発行しています。

政治家として

第一次世界大戦中、スメトナは戦争被害者支援のためのリトアニア救援協会中央委員会の議長を務めました。ドイツに対し、リトアニアの独立国家としての権利を要求する覚え書きを渡す活動も行っています。1917年には、新聞『リトアニアのこだま』を発行し、「リトアニア民族の最も重要な目標は、独立したリトアニア国家を再び確立することだ」と訴えました。同年、リトアニア評議会（後の国家評議会）に加わり、1918年2月16日にはリトアニア独立宣言に署名しました。

1918年末から1919年3月にかけて、スメトナはヴァイマル共和国やスカンディナヴィア諸国でリトアニア独立のために奔走。1919年4月4日、リトアニア国家評議会は大統領に選出しました。1920年に国会に再選されることはありませんでしたが、その後も定期刊行物の編集に携わります。

1923年1月、クライペダ地方がリトアニアに編入されると、スメトナはメーメルラントの行政官に就任しますが、間もなく辞任。同年には、記事発行の嫌疑で投獄されます。1923年から1927年まで、リトアニア大学（現ヴィータウタス・マグヌス大学）で教鞭をとり、倫理学や古典哲学などを講義しました。また、リトアニア狙撃者連合の活動にも参加し、中央理事会に選出されています。

独裁政治

1926年のクーデターで大統領に返り咲いたスメトナは、アウグスティナス・ヴォルデマラスを首相に任命。1928年には議会を抑圧し、大統領の権限を強化した新憲法を公布。1929年にヴォルデマラスを退任させ、リトアニアの独裁者となりました。1931年と1938年の大統領選挙で再選され、1940年6月15日までその地位にありました。

スメトナは地主を優遇し、共産党を弾圧する一方で、国の経済を安定させ、軍事費と教育費を引き上げ、識字率の向上に努めました。

亡命と死

1940年、リトアニアはソ連に占領され、スメトナはドイツに亡命。その後スイスを経て、1941年にアメリカ合衆国へ移住しました。亡命中はリトアニア史と自伝の執筆を始めましたが、1944年1月9日、クリーブランドで火災により死去。彼の遺体は、オハイオ州シャードンの墓地に改葬されています。

アンターナス・スメトナは、リトアニアの独立と国家建設に貢献した一方で、独裁政治を行った人物として評価が分かれています。しかし、彼の生涯は、リトアニアの激動の歴史を象徴するものとして、今も記憶されています。

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