アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ

アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 作品22

作品概要

フレデリック・ショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」作品22は、ピアノと管弦楽のための協奏曲的な性格を持つ楽曲です。しかし、現代において最も広く演奏されているのは、作曲者自身が編曲したピアノ独奏版です。この作品は、ピアノ独奏版が生前に作曲者自身の手によって発表された唯一の協奏的作品であるという点で、ショパンの数ある作品の中でも特別な位置を占めています。このため、国際的なショパンコンクールの予選でも、長年にわたり公式な使用が認められています。

楽曲の成立と出版

この作品は一度に完成されたものではありません。まず、管弦楽伴奏を伴う「華麗なる大ポロネーズ」の部分が1831年に作曲されました。その後、1834年になって、その前奏曲としてピアノ独奏による「アンダンテ・スピアナート」が付加されます。そして、1836年に現在のような二部構成の形で出版されました。この出版に際し、ピアノ独奏版も同時に発表されています。

献呈

この作品は、ショパンのピアノの弟子であったフランス・サラ・デスト男爵夫人に献呈されています。

編成

本来の管弦楽伴奏版における編成は以下の通りです。

• - 独奏ピアノ
• - フルート 2
• - オーボエ 2
• - クラリネット 2
• - ファゴット 2
• - ホルン 2
• - コルネット 2
• - トロンボーン 1
• - ティンパニ
• - 弦五部

楽曲構成

楽曲全体は、前奏曲にあたる「アンダンテ・スピアナート」と主部である「ポロネーズ」の二つの部分から構成されています。全体の演奏時間は約14分です。

アンダンテ・スピアナート

この部分は、ト長調、8分の6拍子で書かれた96小節にわたるピアノ独奏曲です。「spianato」はイタリア語で「滑らかに」という意味を持ちます。この名前の通り、流れるような旋律と伴奏が特徴です。左手による美しい分散和音の上を、右手の旋律線が装飾音を伴って優雅に進みます。ポロネーズの前奏としては比較的規模が大きく、途中で3拍子のマズルカ風のリズムを持つ部分が挟まれるのも特徴です。

ポロネーズ

ポロネーズは変ホ長調を主調とし、コーダを伴う三部形式で構成されています。曲の冒頭は、コルネットによるファンファーレで始まり、この序奏部分は楽曲中で唯一、管弦楽のみで演奏されます。その後、主部に入ると、明るく華やかなピアノ独奏が展開されます。特に右手の装飾音は高度な演奏技巧を要求される部分が多いです。一方、管弦楽はピアノの間に挟まる合いの手のような役割に留まっており、この管弦楽部分が本当にショパン自身の手によるものなのかについては、研究者の間で議論がなされることもあります。ショパンのポロネーズ作品に共通する三連符が、この楽曲でも効果的に用いられています。

楽譜の版による違い

この作品には、楽譜の版によって内容に微妙な違いが見られる箇所があります。特にポロネーズ部分の84小節目2拍目における右手の和音が、異なる版では異なっています。ミクリ版やパデレフスキ版などではb²-d³-b³という和音で記されていますが、エキエル版ではg³-b³-g⁴という和音に変更されています。ショパンの自筆譜を確認すると前者の和音で書かれていますが、エキエル版では81〜82小節で同様の音型が現れる際に後者の和音と類似した音が使われているため、全体の統一性を考慮して変更したものと考えられます。また、ショパンが生きた時代のピアノの鍵盤は現代よりも少なく（通常C₁からf⁴の78鍵）、エキエル版のg⁴の音は当時の鍵盤の音域外にあたります。このことから、エキエル版の変更は、ショパンがもし現代のピアノで作曲していたならば意図したであろう音を推測してのものである可能性が指摘されています。ただし、これらの変更がショパン本人による指示に基づいているわけではないため、演奏する際には注意が必要です。

その他

この楽曲は、ピアニストのヴワディスワフ・シュピルマンの生涯を描いた映画『戦場のピアニスト』（2002年公開）のエンディングテーマとしても使用され、広く知られています。

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