アンデルセン童話 にんぎょ姫

アニメ映画「にんぎょ姫」について

「アンデルセン童話 にんぎょ姫」は、1975年に公開された日本のアニメーション映画で、製作は東映動画（現在の東映アニメーション）です。この作品は、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの没後100年を記念した追悼作品であり、彼の代表作『人魚姫』をベースにしています。カラーで68分の長さを持つ本作は、1975年3月21日に『春の東映まんがまつり』の一環として上映されました。

本作は、アンデルセン原作の東映アニメ映画としては初めて、単一原作として作品化されたもので、1968年の『アンデルセン物語』とは異なり、物語の中に異なる童話を挿入する形式ではありません。アニメ映画化にあたり、メインキャラクターの「人魚姫」と「王子」にそれぞれ「マリーナ」と「フィヨルド」という名前が付けられ、新たにイルカのキャラクター「フリッツ」が追加されました。また、制作の一環として、デンマークでのロケーション撮影も行われ、その映像が物語の導入部に使用されています。

声優陣には、マリーナ役に樫山文枝、フィヨルド役に志垣太郎、フリッツ役に宮城まり子が起用されるなど、豪華なキャストが揃いました。また、マリーナの姉役には杉山佳寿子がキャスティングされ、彼女はテレビアニメ『魔法のマコちゃん』の主演声優を務めていたことでも知られています。

本作は文部省推薦作品および沖縄海洋博協賛作品としても評価され、興行収入は約3億6300万円に達しました。製作方面では、1974年に東映動画の社長が今田智憲に交代し、この作品が初めて今田名義でクレジットされたことが注目されます。そのため、今田はその後、同社の多くの劇場作品に貢献していくことになります。一方で、作画監督を務めた奥山玲子は、本作を最後に東映動画を退社しました。

あらすじ

物語は、海の楽園「海底王国」を舞台に展開します。好奇心旺盛な人魚の姫マリーナは、5人の姉妹の末娘であり、王国で最も美しい歌声の持ち主です。彼女は親友であるイルカのフリッツと遊んでいる間に、美しい人間の王子フィヨルドと出会います。嵐によって海に投げ出された王子を救ったことから、マリーナは彼に強く惹かれるようになります。彼を忘れることができず、彼のもとに行く決意をするマリーナですが、彼女は哀れな運命を迎えることとなります。

キャラクターの紹介

マリーナ（にんぎょ姫）

声 - 樫山文枝
14歳の海底王国の王女で、心優しい純真な少女です。彼女は強い好奇心を持ち、広い世界を知りたいと願っています。美しい歌声とハープ演奏の才能を持ち、人間の王子フィヨルドに恋をします。彼のために声を失い、故郷を捨てる危険な決断をします。

フィヨルド（王子）

声 - 志垣太郎
人間の王子であり、凛々しく勇敢な青年です。彼が求められている政略結婚には反発し、命の恩人である少女を探し続けていますが、マリーナとの出会いの記憶は曖昧なままです。

フリッツ

声 - 宮城まり子
マリーナの親友であるイルカです。彼もまた、マリーナに特別な想いを抱いていますが、彼女の想いは王子に向いており、彼は彼女の幸せを願っています。

音楽と映像

主題歌「アコガレ」は岩谷時子が作詞し、平吉毅州が作曲を担当。映画全体を通じて、音楽も重要な要素となっています。

本作は、当時のアニメーション技術やストーリーテリングの基準を超えた作品であり、今もなお視聴者に愛され続ける名作です。

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