アントニオ・ネグリ
アントニオ・“トーニ”・ネグリ（Antonio “Toni” Negri、1933年8月1日 - 2023年12月15日）は、イタリアを代表する哲学者、政治活動家です。パドヴァ大学やパリ第8大学などで教鞭を執り、その思想は多くの人々に影響を与えました。
ネグリは、特にスピノザとマルクスの研究で知られています。彼の研究は、哲学と政治理論の境界を越え、現代社会の権力構造や変革の可能性を深く考察しました。
マイケル・ハートとの共著『〈帝国〉』では、グローバリゼーションの進展によって現れた新たな主権の形態を「帝国」と捉えました。この「帝国」の特徴は、その脱中心性と脱領域性にあります。ネグリは、アメリカが現代世界で特権的な地位にあることを認めつつも、世界がアメリカによって支配されているという「アメリカ帝国」論とは異なる視点から、グローバルな権力構造を分析しました。
ヴェネト州パドヴァで生まれたネグリは、1970年代にはイタリアのオートノミズム運動の指導者として活躍しました。しかし、1979年4月7日、赤い旅団によるアルド・モーロ元首相誘拐暗殺事件を含む多くのテロを主導した疑いで逮捕・起訴されました。その後の調査で、事件への直接的な関与や旅団との関係はなかったことが明らかになりましたが、1960年代からの言論活動や過激な政治運動への影響力が問われ、有罪判決を受けました。
裁判中の1983年、ネグリはイタリア議会選挙に獄中から立候補し当選しました。議員の不逮捕特権によって一時的に釈放されましたが、数ヶ月後には特権を剥奪され、フランスへ逃亡・亡命しました。フランスでは、研究・執筆活動を続け、多くの著作を発表しました。1997年7月1日、刑期を消化するために自主的にイタリアに帰国し収監されました。その後、処遇が緩和され、2003年4月25日に釈放されました。
2023年12月15日、パリで90歳で亡くなりました。
2008年3月、ネグリは日本の財団法人国際文化会館の招きで来日し、東京大学、京都大学、東京芸術大学でグローバル化時代の労働問題をテーマに講演する予定でした。しかし、3月17日に日本国外務省から、洞爺湖サミットを控えて入国管理が厳しくなっているため、ビザを申請するよう求められました。入管法では、国内外の法律に違反し1年以上の懲役や禁錮刑を受けた外国人の入国を禁じており、政治犯については例外規定がありますが、法務大臣の特別許可が必要とされました。この手続きには時間がかかるため、今回の来日日程には間に合わず、ネグリの来日は断念せざるを得ませんでした。
この決定に対して、東大の姜尚中教授や神戸大の市田良彦教授ら、8大学の研究者19人が抗議声明を発表し、事実上の入国拒否であると批判しました。その後、2013年4月にネグリは来日を果たし、首相官邸前での抗議活動の様子を視察しました。
ネグリの著作は、政治哲学、マルクス主義、スピノザ哲学など、多岐にわたる分野に及んでいます。
単著
『未来への帰還―ポスト資本主義への道』
『構成的権力―近代のオルタナティブ』
『転覆の政治学―21世紀へ向けての宣言』
『ネグリ生政治的自伝―帰還』
『マルクスを超えるマルクス―『経済学批判要綱』研究』
『〈帝国〉をめぐる5つの講義』
『ヨブ―奴隷の力』
『芸術とマルチチュード』
『アントニオ・ネグリ講演集』(上・下)
『さらば、"近代民主主義"―政治概念のポスト近代革命』
『未来派左翼―グローバル民主主義の可能性をさぐる（上・下）』
『野生のアノマリースピノザにおける力能と権力』
『革命の秋―いまあるコミュニズム』
『スピノザとわたしたち』
『デカルト・ポリティコ 政治的存在論について』
編著
『世界が日本のことを考えている3・11後の文明を問う 17賢人のメッセージ』
『現代思想 特集=ネグリ+ハート 帝国〉・マルチチュード・コモンウェルス』
『ネグリ、日本と向き合う』
共著
フェリックス・ガタリ『自由の新たな空間――闘争機械』
マイケル・ハート『〈帝国〉―グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』
『非対称化する世界―『〈帝国〉』への射程』
マイケル・ハート『マルチチュード―〈帝国〉時代の戦争と民主主義（上・下）』
マイケル・ハート『ディオニュソスの労働―国家形態批判』
白井聡、市田良彦『戦略の工場―レーニンを超えるレーニン』
マイケル・ハート『コモンウェルス―〈帝国〉を超える革命論（上・下）』
マイケル・ハート『叛逆―マルチチュードの民主主義宣言』
マイケル・ハート『アセンブリ—新たな民主主義の編成』
イタリア現代思想
経済学批判要綱
"Empire" 原著(英語,PDF,部分表示)
ネグリの思想は、現代社会の政治、経済、文化を理解する上で、重要な視点を提供し続けています。
概要
ネグリは、特にスピノザとマルクスの研究で知られています。彼の研究は、哲学と政治理論の境界を越え、現代社会の権力構造や変革の可能性を深く考察しました。
マイケル・ハートとの共著『〈帝国〉』では、グローバリゼーションの進展によって現れた新たな主権の形態を「帝国」と捉えました。この「帝国」の特徴は、その脱中心性と脱領域性にあります。ネグリは、アメリカが現代世界で特権的な地位にあることを認めつつも、世界がアメリカによって支配されているという「アメリカ帝国」論とは異なる視点から、グローバルな権力構造を分析しました。
経歴
ヴェネト州パドヴァで生まれたネグリは、1970年代にはイタリアのオートノミズム運動の指導者として活躍しました。しかし、1979年4月7日、赤い旅団によるアルド・モーロ元首相誘拐暗殺事件を含む多くのテロを主導した疑いで逮捕・起訴されました。その後の調査で、事件への直接的な関与や旅団との関係はなかったことが明らかになりましたが、1960年代からの言論活動や過激な政治運動への影響力が問われ、有罪判決を受けました。
裁判中の1983年、ネグリはイタリア議会選挙に獄中から立候補し当選しました。議員の不逮捕特権によって一時的に釈放されましたが、数ヶ月後には特権を剥奪され、フランスへ逃亡・亡命しました。フランスでは、研究・執筆活動を続け、多くの著作を発表しました。1997年7月1日、刑期を消化するために自主的にイタリアに帰国し収監されました。その後、処遇が緩和され、2003年4月25日に釈放されました。
2023年12月15日、パリで90歳で亡くなりました。
2008年の訪日騒動
2008年3月、ネグリは日本の財団法人国際文化会館の招きで来日し、東京大学、京都大学、東京芸術大学でグローバル化時代の労働問題をテーマに講演する予定でした。しかし、3月17日に日本国外務省から、洞爺湖サミットを控えて入国管理が厳しくなっているため、ビザを申請するよう求められました。入管法では、国内外の法律に違反し1年以上の懲役や禁錮刑を受けた外国人の入国を禁じており、政治犯については例外規定がありますが、法務大臣の特別許可が必要とされました。この手続きには時間がかかるため、今回の来日日程には間に合わず、ネグリの来日は断念せざるを得ませんでした。
この決定に対して、東大の姜尚中教授や神戸大の市田良彦教授ら、8大学の研究者19人が抗議声明を発表し、事実上の入国拒否であると批判しました。その後、2013年4月にネグリは来日を果たし、首相官邸前での抗議活動の様子を視察しました。
主な著作（邦訳）
ネグリの著作は、政治哲学、マルクス主義、スピノザ哲学など、多岐にわたる分野に及んでいます。
単著
『未来への帰還―ポスト資本主義への道』
『構成的権力―近代のオルタナティブ』
『転覆の政治学―21世紀へ向けての宣言』
『ネグリ生政治的自伝―帰還』
『マルクスを超えるマルクス―『経済学批判要綱』研究』
『〈帝国〉をめぐる5つの講義』
『ヨブ―奴隷の力』
『芸術とマルチチュード』
『アントニオ・ネグリ講演集』(上・下)
『さらば、"近代民主主義"―政治概念のポスト近代革命』
『未来派左翼―グローバル民主主義の可能性をさぐる（上・下）』
『野生のアノマリースピノザにおける力能と権力』
『革命の秋―いまあるコミュニズム』
『スピノザとわたしたち』
『デカルト・ポリティコ 政治的存在論について』
編著
『世界が日本のことを考えている3・11後の文明を問う 17賢人のメッセージ』
『現代思想 特集=ネグリ+ハート 帝国〉・マルチチュード・コモンウェルス』
『ネグリ、日本と向き合う』
共著
フェリックス・ガタリ『自由の新たな空間――闘争機械』
マイケル・ハート『〈帝国〉―グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性』
『非対称化する世界―『〈帝国〉』への射程』
マイケル・ハート『マルチチュード―〈帝国〉時代の戦争と民主主義（上・下）』
マイケル・ハート『ディオニュソスの労働―国家形態批判』
白井聡、市田良彦『戦略の工場―レーニンを超えるレーニン』
マイケル・ハート『コモンウェルス―〈帝国〉を超える革命論（上・下）』
マイケル・ハート『叛逆―マルチチュードの民主主義宣言』
マイケル・ハート『アセンブリ—新たな民主主義の編成』
関連項目
イタリア現代思想
経済学批判要綱
外部リンク
"Empire" 原著(英語,PDF,部分表示)
ネグリの思想は、現代社会の政治、経済、文化を理解する上で、重要な視点を提供し続けています。
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