アントニオ・マスペス

アントニオ・マスペス：トラックレース界の伝説

アントニオ・マスペス（Antonio Maspes, 1932年1月14日 - 2000年10月19日）は、イタリア・ミラノが生んだ、自転車トラックレース界における傑出した名選手です。その輝かしい功績は、数々のタイトルと記録によって裏付けられています。

卓越したキャリア

マスペスの才能は早くから開花し、1952年のヘルシンキオリンピックでは、チェーザレ・ピナレッロとのコンビでタンデムスプリント種目に出場し、銅メダルを獲得しました。このメダルを機に、マスペスはプロの世界へと足を踏み入れ、その才能を本格的に開花させていきます。

1953年にプロへ転向後、マスペスは瞬く間にトップ選手へと成長しました。1955年、コペンハーゲンで開催された世界自転車選手権プロ・スプリント決勝では、スイスの強豪オスカル・プラットナーを下し、自身初となる世界チャンピオンの座を獲得しました。

翌1956年の世界選同種目決勝では、イギリスの名選手レジナルド・ハリスを破り、見事連覇を達成。その後2年間は優勝を逃すものの、1959年にはフランスのミシェル・ルソー、1960年には再びオスカル・プラットナー、1961年には再びミシェル・ルソーをそれぞれ決勝で下し、圧倒的な強さを見せつけました。

勢いは止まらず、1962年にはローマオリンピックのスプリントと1kmタイムトライアルを制した同胞の英雄、サンテ・ガイアルドーニをも決勝で破り、前人未到の4連覇を達成。この偉業は、マスペスの名声を不動のものとしました。

1963年の同大会では、ガイアルドーニに決勝で敗れましたが、翌1964年にはオーストラリアのロン・バエンシュを破り、ベルギーの英雄ジェフ・シェーレンと並び、世界選手権プロ・スプリント最多優勝記録となる7回目の優勝を果たしました。この記録は、後に中野浩一が8連覇を達成するまで、長く破られることはありませんでした。

その他の功績

マスペスの偉業は、世界選手権だけにとどまりません。グランプリ・ド・パリでは5回の優勝を飾り、その実力の高さを証明しました。また、1960年には、200mフライングタイムトライアルにおいて、10.8秒の世界新記録（当時）を樹立。これは、マスペスの瞬発力とスピードが世界トップレベルであることを示すものでした。

引退後

1967年に現役を引退したマスペス。彼の功績は、その後も長く讃えられました。その証として、ミラノにあるヴィゴレッリ自転車競技場は、「マスペス＝ヴィゴレッリ自転車競技場」と改名され、彼の名前が永遠に刻まれることとなりました。

アントニオ・マスペスは、その圧倒的な実力と数々の記録によって、自転車トラックレース界に不滅の足跡を残しました。彼の名は、今後も語り継がれることでしょう。

[外部リンク]

アントニオ・マスペス - サイクリングアーカイヴス（英語）
アントニオ・マスペス - Olympedia（英語）

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