アントワープ王立美術館

アントワープ王立美術館（Koninklijk Museum voor Schone Kunsten Antwerpen）は、ベルギーのアントワープにある美術館で、そのコレクションは14世紀後半にまで遡ります。元々はアントウェルペンの画家組合である聖ルカ組合が所有していた美術品コレクションが基盤となっています。このコレクションは、組合解散後、美術学校（後のアントウェルペン王立芸術学院）に引き継がれ、ルーベンス、ヨルダーンス、フォスなど、アントウェルペンで活躍した画家の作品が多く含まれていました。

1790年代、アントウェルペンがフランスに占領された際、教会などから没収された美術品も、後にコレクションに加わりました。1810年に美術館として開館し、1817年には127点の美術品を所蔵しており、その大半が16世紀中期から17世紀の作品、特にルーベンスの作品が中心でした。19世紀初頭にはオランダ国王ウィレム1世の支援を受け、イタリア画家の作品が寄贈されたり、同時代の作品購入予算が与えられたりしましたが、1830年のベルギー独立革命により支援は途絶えました。その後、1873年になって初めて、存命画家の作品を購入するようになりました。さらに、アントウェルペンの元市長フロレント・ファン・エルトボルンのコレクションが遺贈されたことで、コレクションは大幅に拡充されました。

美術館はフランドル派から現代絵画まで、幅広い作品を所蔵しています。代表的な所蔵品としては、ヤン・ファン・エイクの『泉の聖母』、ジャン・フーケの『聖母子と天使たち』、ティツィアーノ・ヴェチェッリオの『聖ペテロと教皇アレクサンデル6世、ペーザロ司教』、ピーテル・パウル・ルーベンスの『東方三博士の礼拝』、ヤーコプ・ヨルダーンスの『羊飼いの礼拝』などが挙げられます。これらの作品は、美術史において重要な位置を占めるものばかりです。

2011年9月から、美術館は修復・拡張工事のため休館しており、2020年に再開館が予定されています。休館中、一部の作品はアントワープ市内の他の美術館で公開されています。大規模な改修工事を経て、美術館はさらに魅力的な空間へと生まれ変わることが期待されます。

日本では、2010年に「アントワープ王立美術館コレクション展」が開催され、19世紀末から20世紀中頃までのベルギー絵画が紹介されました。この展覧会を通して、多くの日本人がベルギー美術に触れる機会を得ました。アントワープ王立美術館は、ベルギー美術の歴史と発展を物語る上で欠かせない存在であり、そのコレクションは、美術愛好家だけでなく、歴史や文化に関心のある人々にとっても大きな魅力となっています。

美術館のウェブサイトでは、コレクションに関する詳しい情報や、休館中の展示状況などが公開されています。再開館後には、より多くの人々が、この美術館の素晴らしいコレクションを堪能することができるでしょう。アントワープ王立美術館は、美術史における重要な美術館の一つとして、その名を知られています。

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