アンドレイ・ルブリョフ (映画)

映画『アンドレイ・ルブリョフ』

『アンドレイ・ルブリョフ』（Андрей Рублёв）は、1966年にソビエト連邦で製作された映画で、監督はアンドレイ・タルコフスキーが務め、脚本はタルコフスキーとアンドレイ・コンチャロフスキーの共同によるものです。本作は、15世紀初頭のモスクワ大公国を舞台に、著名なイコン画家アンドレイ・ルブリョフの人生と彼が直面した苦悩を描いています。

作品の背景と製作

本作は、モスフィルムによって制作され、1966年12月にモスクワで完成されたものの、国家の検閲によって公開が遅れることになります。批判の内容は歴史的解釈や暴力的描写に関するもので、特にロシア民衆の描写において過度の悲観があったとされています。その結果、検閲を通過するために一部シーンがカットされ、1971年にようやく一般公開されました。

公開延期を乗り越え、1969年にはカンヌ国際映画祭に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞するという快挙を成し遂げましたが、当時のソビエト政府からの反発を受けることになりました。

あらすじと構成

映画は、「プロローグ」、「エピローグ」と付き、全10章から構成されています。物語は、アンドレイ・ルブリョフの内面的な闘争や道徳的選択に焦点を当てており、動乱の時代における彼の成長を描写しています。作品は「動乱そして沈黙」と「試練そして復活」の二部構成で、各章でルブリョフが直面する問題や人々との関わりを通して、彼の芸術観や信念に迫ります。

第1部：動乱そして沈黙

• - プロローグでは、聖堂の屋上から気球が離陸する場面が印象的に描かれています。
• - 旅芸人の章では、ルブリョフたちが新たな土地を求めて旅をする中、村人たちの厳しい現実を目の当たりにします。
• - フェオファンでは、著名なイコン画家からの誘いを受ける中で、ルブリョフは自らの信念と向き合います。
• - アンドレイの苦悩では、ルブリョフとフェオファンの議論を通じて、人々の信仰と無知について深く掘り下げます。
• - 祭日では、欲望に溺れる人々の姿が描かれ、ルブリョフが異教徒に捕らえられる場面へと至ります。
• - 最後の審判では、ルブリョフが大公の命令で壁画を制作する過程の中での苦悩が描かれています。

第2部：試練そして復活

• - 襲来では、大公の弟とタタール兵の襲撃によって混乱が広がります。
• - 沈黙では、ルブリョフが絵を描かず沈黙の行を行う中で彼の内面が描かれます。
• - 鐘の章では、若き鋳物師ボリースカが大公から鐘を作るよう命令され、物語が進展する重要な瞬間を迎えます。
• - 最後のエピローグでは、ルブリョフの描いたイコンが次々と映し出され、彼の苦悩から生まれた美が表現されます。

評価と影響

映画は、その複雑な構成と壮大なテーマにより、批評家たちから高い評価を受けています。タルコフスキー自身の哲学や芸術観が反映され、ルブリョフを通じてさらに深い人間性や創作の苦悩が描かれています。国内外の映画批評家から多くの賞を受賞し、今なお映画史における傑作として位置付けられています。

結論

『アンドレイ・ルブリョフ』は、ただの歴史映画に留まらず、芸術家の内面的な葛藤と創造性の重要性を問いかける作品です。ソビエト映画界の中での検閲や政治的背景を越え、多くの人々に深い影響を与え続けているこの映画は、タルコフスキーの代表作として、映画史にその名を刻んでいます。

もう一度検索