アンドレ＝ジャック・ガルヌラン

アンドレ＝ジャック・ガルヌラン (1769年1月31日-1823年8月18日) は、現代パラシュートの父として名高いフランス人発明家です。それまでのパラシュートは枠組みのある構造でしたが、ガルヌランは枠をなくした、より現代的なパラシュートを考案しました。

彼は、気球発明者として有名なジャック・シャルルの弟子でした。ナポレオン戦争が始まった頃、イギリス軍に捕虜となり、オーストリア軍に引き渡されてハンガリーのブダで3年間の捕虜生活を送ることになります。この捕虜生活の中で、脱出手段としてパラシュートのアイデアを練り上げたとされています。

解放後、ガルヌランは熱気球飛行にのめり込みます。1790年には自作の熱気球で初飛行を成功させました。そして1797年10月22日、パリで歴史的な偉業を達成します。高度約900mの気球から、絹製の自作パラシュートで飛び降りたのです。着地は衝撃を伴いましたが、ガルヌラン自身は無事でした。しかし、パラシュートの頂部に穴がなかったため、気流の影響で危険な横揺れに見舞われ、着地後には気分が悪くなったと伝えられています。この経験を基に、天文学者ジェローム・ラランドの助言を受け、パラシュートの改良を行いました。

彼の妻ジャンヌ＝ジュヌヴィエーヴ・ガルヌランと姪のエリザも、パラシュート降下を経験しています。ジャンヌはパラシュート降下をした最初の女性として歴史に名を残しました。

1797年の初降下以降、世界各国でパラシュートの改良と実験が盛んに行われました。わずか5年後には、ガルヌラン自身は2400mからの落下に成功しています。

1802年、アミアンの和約による平和期間を利用して、ガルヌラン夫妻はイギリスを訪れ、ロンドンでパラシュート降下の実演を行いました。この出来事は、バラッドにも歌われるほど注目を集めました。同年7月5日には、水彩画家エドワード・H・ロッカーを同乗させて気球飛行も行っています。しかし、その後、仏英関係が悪化したため、フランスへ帰国しました。

ガルヌランは、パラシュート降下だけでなく、気球による長距離飛行でも知られています。1803年10月3日から4日にかけては、モスクワからポローヴァ（約300km）間の飛行を成功させ、1807年11月22日から23日にかけては、パリからクラウゼン（ルクセンブルクの一部、約395km）まで飛行しました。

彼の生涯は、1807年、パリで新しい気球を作製している最中に起きた事故によって幕を閉じます。作業中の事故で梁に打たれ、亡くなったと伝えられています。

興味深い逸話として、1804年のナポレオンの戴冠式では、ガルヌランが三千個のランプで飾られた無人気球を飛ばしました。この気球は、予想外の強風によってローマまで流され、暴君ネロの墓に衝突したという話が伝わっています。新聞の皮肉な報道にナポレオンの怒りが向けられたというエピソードも残っています。ただし、この気球がブラッチャーノ湖に落ちたという記録もあるようです。

アンドレ＝ジャック・ガルヌランは、パラシュートと気球の分野で革新的な業績を残した、真の先駆者であったと言えます。彼の功績は、現代のパラシュート技術や、航空技術の進歩に多大な影響を与え続けています。

もう一度検索