バラッド

バラッドの概要

バラッド（英: ballad）は、イギリスを中心に伝承されてきた物語性を持つ歌の形式で、主に詩による語りを特徴とします。この形式の歌は、一連の出来事を韻文で表現し、武勇伝やロマンス、社会的な皮肉、政治的テーマなどが扱われます。多くのバラッドは、物語の結末による破局が描かれている点が特徴です。

バラッドはフランス語の「バラード（仏: ballade）」に由来しており、特徴として物語性が強調されます。語り手は第三者であることが多く、主人公の内面よりも行動や対話が前面に出るのが一般的です。イギリスの伝統的なバラッドは通常、四行から成る連が基本で、韻律はイアンボスを用い、奇数行は抑揚が変化し、偶数行がリズムを保持します。韻の法則は、2行目と4行目で韻を踏む（ABCB形式）が、奇数行は押韻しないことが多いです。

特徴

バラッドの構文は、シンプルで親しみやすいものが多く、反復句も用いられることが一般的です。歌われる旋律は調性的ではなく、旋法的であることが特徴的です。また、バラッドは基本的に口承文学であり、作成者不詳の場合が多く、地域によってその内容や旋律に変化が見られます。その内容は、識字率の低い人々にニュースや事実を伝える役割を果たしていた歴史もあり、時には倫理的な教訓が最後に付されることもあります。

バラッドの種類

バラッドにはいくつかの分類があります。主なものは次の通りです。

• - ブロードサイド・バラッド: 17世紀のイングランドで流行し、かわら版と同様の形式で出版された作品。アメリカの民謡の起源ともされています。
• - マーダー・バラッド: 殺人の歌で、犯人が独り言をつぶやく形式。しばしば悲劇的な結末を迎えます。
• - ボーダー・バラッド: イングランドとスコットランドの国境に伝わる民謡の影響を受けた作品群で、略奪者や歴史がテーマです。
• - 文学的バラッド: 民謡が復興したロマン主義時代に生まれた物語詩。シューベルトやレーヴェの作品がこのカテゴリーに属します。
• - バラッド・オペラ: 大衆文化を反映した政治的または社会的なテーマを歌ったオペラ形式の作品で、17～18世紀の社会風刺を含む。

有名なバラッド

バラッドには多くの有名な作品があり、以下のようなものがあります。

• - スカボロー・フェア: 英国民謡の定番。
• - バーバラ・アレン: 愛と悲劇が描かれた有名なバラッド。
• - シェナンドー: アメリカ民謡としても知られています。
• - 三羽のカラス: 様々なバリエーションが存在する伝統的なバラッド。

さらに、近代の音楽にもバラッドの影響が見られます。イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」やレッド・ツェッペリンの「天国への階段」などがその例で、バラッドの構造や語り口が意識されています。

バラッドは、口承文化の一部として、時代を超えて語り継がれ、今なお多くの人々に影響を与えています。

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