アンナ (ロシア皇帝)

アンナ・イヴァノヴナの生涯と治世

アンナ・イヴァノヴナ（Анна Иоанновна、1693年2月7日 - 1740年10月28日）は、ロマノフ朝の第4代ロシア皇帝であり、1730年から1740年の間に在位しました。彼女は、ピョートル1世の兄イヴァン5世とその妻プラスコヴィヤ・サルトゥイコヴァの四女です。

結婚と未亡人生活

1710年11月、アンナはクールラント公国のフリードリヒ・ヴィルヘルムと結婚しました。しかし、夫は1711年1月に急死し、アンナは未亡人となります。その後、彼女はクールラント公国の主権者として、ミタウ（現在のイェルガヴァ）に居を構えました。

即位と政治

1730年にピョートル2世が崩御すると、最高枢密院の保守派貴族たちはピョートル1世の直系を避ける方針を選び、アンナが後継者として選出されます。彼女は即位に際し、君主権を制約する「条件」に同意するよう求められましたが、モスクワへの帰還後、一般貴族の支持を得てその誓約書を破棄し最高枢密院を廃止しました。これにより、皇帝による専制政治が復活し、イギリス式の貴族寡頭制への移行は消え去りました。

政治と内政への関心

当時の多くのロシア貴族女性同様、アンナは教育を受けておらず、国政への関与は薄いものでした。エルンスト・ビロン、アンドレイ・オステルマン、ミュンニヒ元帥に政治を委ね、彼らの支配に依存しました。彼らはドイツ系出身の人物であったため、アンナの政府は「ドイツ人による支配」として反感を買いましたが、実際には彼らは互いに対立し、特定の支配層を形成していたわけではありません。

外交政策

アンナはピョートル大帝以来の親オーストリア、反スウェーデン政策を引き継ぎました。特に1733年から1735年のポーランド継承戦争では、オーストリアが支持するアウグスト3世を支援しました。また、1732年にはペルシアのナーディル・シャーとラシュト条約を結び、カスピ海周辺の領地を返還した他、1735年には対オスマン帝国同盟を締結しました。神聖ローマ皇帝カール6世の干渉を受けつつも、オスマン帝国への攻撃を試みました。

内政改革と評価

1732年にはサンクトペテルブルクへの遷都を行い、都市の発展や消防隊、郵便網の設置を進めました。貴族の義務を緩め、教育の機会を提供する陸軍幼年学校も創設しました。しかし、治世中は凶作や疫病が続き、厳しい税の取り立てが各地で行われたため、19世紀の歴史家たちからは厳しく評価され、「ロシア史の暗黒の10ページ」と称されました。

後継者問題と死去

アンナは、軍の支持を受けるピョートル大帝の娘エリザヴェータに帝位を奪われるのではないかと心配していました。1740年8月に姪のアンナ・レオポルドヴナが男子を出産すると、その子を後継者に選びます。しかし、1740年10月、アンナは腎臓の病により亡くなります。彼女が後継ぎとして選んだイヴァン6世は、エリザヴェータによって廃位され、アンナの夢は崩れ去りました。

文化と趣味

ドイツ語圏で長年生活していたアンナは、西洋文化に触れることに積極的でした。イタリアから劇団や音楽家を招聘し楽しみましたが、彼女は彼らを道化のように扱ったと言われています。また、ギャンブルや狩猟を嗜み、宮廷は一見洗練されていませんでした。彼女は建築家ラストレッリを支援し、1739年には氷でできた宮殿を建設しましたが、これは翌年には溶けてしまいます。

このように、アンナ・イヴァノヴナの治世は多岐に渡る側面を持ち、その影響はロシア史においても重要な位置を占めています。

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