アンナ・ニコル・スミス

アメリカ合衆国のモデル、女優、そしてテレビジョンパーソナリティとして知られるアンナ・ニコル・スミス（Anna Nicole Smith, 1967年 11月28日 - 2007年 2月8日）は、そのグラマラスな容姿と波乱に満ちた人生で、常に世間の話題の中心にいた人物です。

生い立ち

本名をヴィッキー・リン・ホーガンといい、1967年 11月28日、テキサス州ヒューストンで生まれました。両親はヴィッキーが2歳になる前に離婚し、彼女は主に母親と母方の叔母によって育てられます。学業は必ずしも順調ではなく、高校を中退しました。17歳でビリー・ウェイン・スミスと最初の結婚をし、翌年には長男ダニエルをもうけますが、数年後には破局し、幼い息子と共にヒューストンへ戻ります。ヒューストンでは様々な仕事を経験し、ナイトクラブでストリッパーとして働いた時期もありました。

キャリアと注目

1990年代初頭、PLAYBOY創始者のヒュー・ヘフナーに見いだされたヴィッキーは、アンナ・ニコル・スミスとして活動を始めます。1992年3月号でPLAYBOY誌の表紙を飾ると、そのマリリン・モンローを思わせる豊満なスタイルは大きな反響を呼び、「マリリン・モンローの再来」と称賛されました。翌1993年にはプレイメイト・オブ・ザ・イヤーに選出され、一躍トップモデルの地位を確立します。PLAYBOY以外にも、ゲス・ジーンズやレーン・ブライアントといった有名ブランドの広告モデルとして活躍し、さらに自身のリアリティ番組「アンナ・ニコル・ショー」を持つなど、活動の幅を広げました。

億万長者との結婚と遺産争い

アンナの人生で最も世間の注目を集めた出来事の一つは、1994年 6月27日に行われた、テキサスの石油王J・ハワード・マーシャルとの結婚です。ナイトクラブでの出会いをきっかけに結ばれた二人の年齢差は実に63歳というもので、アンナが彼の莫大な資産を目当てにしたものだという憶測が飛び交いました。アンナ自身はこの見方を否定しましたが、マーシャルの死後、彼の遺産を巡って長期間にわたる激しい法廷闘争が勃発します。相手はマーシャルの息子（アンナにとっては義理の息子）E・ピアース・マーシャルでした。この裁判は州を越え、最終的にはアメリカ合衆国最高裁判所にまで持ち込まれるほどの複雑な様相を呈しました。ピアースは裁判中に死去しますが、遺産を巡る争いはその後も続き、最終的にアンナ側が資産を相続することは叶いませんでした。

息子と自身の死、そしてその後

2006年9月、アンナはバハマで長女ダニーリンを出産します。しかし、その直後の9月10日、母子を見舞いに来ていた20歳だった長男ダニエルが急死するという悲劇に見舞われます。ダニエルの死因は、複数の処方薬の併用による薬剤性の不整脈と推定されました。息子を失った深い悲しみの中で、アンナは娘ダニーリンの親権を巡る問題にも直面します。複数の男性がダニーリンの父親であると名乗り出たため、DNA鑑定が行われ、芸能ジャーナリストのラリー・バークヘッドが実の父親であることが確認されました。

そして2007年 2月8日、アンナ自身もフロリダ州のホテルで意識不明の状態で発見され、搬送先の病院で39歳の若さで死亡が確認されました。死因は、複数の処方薬の過剰摂取によるものでした。息子の急死に続くアンナの突然の死は、再びメディアの大きな注目を集め、その不可解な状況は様々な憶測を呼びました。彼女の死後も、残された娘ダニーリンの養育権や、解決していなかった遺産問題などが引き続き報道されました。

また、アンナの死に関連して、彼女に過剰な量の処方薬を投与していたとして、弁護士や医師らが共謀容疑で訴追されるという出来事もありました。

人物像と影響

アンナ・ニコル・スミスは、そのキャリアを通じて体重の増減が激しく、豊胸手術の公表など、私生活の話題も包み隠さず語ることから、ゴシップ誌の格好の標的となりました。ダイエットサプリメントの広告塔として成功を収めた一方で、虚偽広告であるとして訴訟を起こされたこともあります。死後には、自身がバイセクシャルであったことも明かされています。

彼女のドラマチックで短い人生は、多くの人々の関心を引き続け、死後も様々な形で影響を与えています。2011年には、彼女の生涯を基にしたオペラ「アンナ・ニコール」がロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスで上演され、話題となりました。また、伝記映画の製作も計画されるなど、その数奇な人生は語り継がれています。

主な出演作品（映画）

- 裸の銃を持つ男 PART 33 1/3 最後の侮辱 (1994)
- 未来は今 (1994)
- ジャッジ・ブロンド (1995)
- デンジャーゾーン/摩天楼からの脱出 (1997)
- Be Cool/ビー・クール|Be Cool_ビー・クール (2005, カメオ出演)
- Illegal Aliens (2006)

アンナ・ニコル・スミスは、その美貌とカリスマ性、そしてジェットコースターのような人生で、20世紀末から21世紀初頭にかけてのアメリカのポップカルチャーにおいて、忘れられない存在感を放っています。

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