アンフィポリスの戦い

アンフィポリスの戦い：ペロポネソス戦争の転換点

ペロポネソス戦争において、紀元前422年に発生したアンフィポリスの戦いは、戦争の帰趨を大きく左右する重要な戦いでした。この戦いは、アテネとスパルタという古代ギリシアの二大勢力の対立を鮮やかに描き出し、両軍の戦略、戦術、そして指導者の資質を浮き彫りにしています。

アンフィポリス包囲とアテネの苦戦

紀元前424年から423年の冬、スパルタの将軍ブラシダスは、ストライモン川沿いのアテネの植民都市アンフィポリスを包囲しました。ほぼ同時期にデリオンの戦いも発生しており、アテネは多方面からの攻撃に苦慮していたと考えられます。アテネ側の守備を指揮した将軍ユークルズは抵抗を試みましたが、ブラシダスの攻撃の前にアンフィポリスは陥落。アテネにとって大きな痛手となりました。この作戦におけるブラシダスの大胆な戦略と、アテネ側の守備の脆さが、この戦いの帰趨に大きく影響を与えました。

休戦協定と戦闘の再開

紀元前433年には、アテネとスパルタの間で休戦協定が締結されていました。しかし、この協定は紀元前422年に失効。休戦期間が明けたことで、両陣営は再び戦争へと突き進んでいきます。

アテネは、将軍クレオンをトラキアへと派遣。クレオンは30隻の艦隊、1200人の重装歩兵、300人の騎兵を率い、アテネの同盟軍と共にアンフィポリス奪還を目指しました。クレオンはまず、トロネとシオーネを奪還するなど、緒戦で成功を収めます。

ブラシダスの奇襲とアテネ軍の敗北

一方、ブラシダスはアンフィポリスに約2000人の重装歩兵と300人の騎兵を配置し、クレオン率いるアテネ軍を迎撃態勢を整えていました。クレオンはブラシダスの兵力に劣ると判断し、直接対決を避けようとしていました。

しかし、ブラシダスはクレオン軍の弱点を自ら偵察によって見抜き、兵力差を覆す大胆な奇襲作戦を決行。混乱したクレオン軍に痛烈な攻撃を加え、アテネ軍は敗北を喫しました。この戦いで、アテネ軍の司令官クレオンは戦死しました。

戦争への影響とニキアスの和約

アンフィポリスの戦いの結果、スパルタはアテネに対して優位に立つことができました。さらに、この戦いでスパルタのブラシダスとアテネのクレオンという、両陣営の主戦派指導者が戦死したことは、講和ムードを高める要因となりました。そして、翌紀元前421年にはニキアスの和約が締結されます。

しかし、この和約は長続きしませんでした。アテネとスパルタは、和約で定められた領土の返還を履行せず、アテネには新たな主戦派リーダーであるアルキビアデスが台頭するなど、様々な要因から、和約は破られ、再び戦争状態に陥るのです。

アンフィポリスの戦いは、ペロポネソス戦争における重要な転換点であり、戦争の長期化、そしてその後の展開に大きな影響を与えたと言えます。この戦いを理解することは、ペロポネソス戦争全体の理解に不可欠です。

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