アンリ・ゴーディエ＝ブルゼスカ

アンリ・ゴーディエ＝ブルゼスカ：夭逝の彫刻家とヴォーティシズム

アンリ・ゴーディエ＝ブルゼスカは、20世紀初頭に活躍したフランスの彫刻家です。1891年10月4日、フランス・ロワレ県で、大工の息子として誕生しました。幼少期から才能を開花させ、オルレアンの高等小学校で英語教師の目に留まり、イギリスへの留学経験も積んでいます。この経験から、英語にも堪能になりました。

その後、彼はドイツへの旅行を経てフランスへ戻り、出版社で通訳として勤務。そこで、ポーランド出身の小説家志望の女性、ソフィー・ブルゼスカと出会います。二人は恋愛関係に発展しますが、ソフィーが18歳年上だったことから、家族の反対にあい、ロンドンへ移住することになります。二人はゴーディエ＝ブルゼスカの名前で活動するものの、正式な結婚はしていませんでした。

ロンドンでの生活は、ゴーディエ＝ブルゼスカの芸術家としての道を大きく開きます。彼は、パーシー・ウインダム・ルイスやエズラ・パウンドといった、当時を代表する前衛芸術家たちと交流を深め、1913年か1914年に結成されたとされる前衛芸術グループ「ヴォーティシズム」の創立メンバーとなります。

ゴーディエ＝ブルゼスカの彫刻作品は、大英博物館やヴィクトリア・アンド・アルバート博物館で目にした原始美術からの影響が色濃く見て取れます。力強く、原始的な表現、幾何学的で抽象的な造形は、当時の美術界に衝撃を与えました。彼は、独特のスタイルで数多くの彫刻作品を制作し、高い評価を得ていきます。

しかし、彼の輝かしいキャリアは、第一次世界大戦によって断たれます。1915年、フランス陸軍に徴兵され、戦地に赴いた彼は、数々の武勲を立てながらも、同年6月5日、パ＝ド＝カレー県で戦死。23歳の若さで、その生涯を終えました。

ゴーディエ＝ブルゼスカの死後、彼の生涯と作品は、パートナーだったソフィーによって伝えられました。しかし、ソフィーは彼の死後、精神を病み、1925年に施設で亡くなっています。

ゴーディエ＝ブルゼスカの生涯は、イギリスの作家ジム・イードによって、ソフィーが残した資料をもとに書籍『Savage Messiah（野蛮なメシア）』としてまとめられ、1931年に出版されました。この書籍は後に、ケン・ラッセル監督により映画化され（邦題例：狂えるメサイア）、広く知られることとなりました。

ゴーディエ＝ブルゼスカの作品は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。彼の短い生涯は、多くの悲しみと共に、現代美術史に大きな足跡を残しました。彼の彫刻作品は、時代を超えて、力強く、そして儚い美を放ち続けているのです。彼の生涯と芸術は、これからも研究され、語り継がれていくことでしょう。

参考文献

Harold S. Ede: Savage Messiah. A biography of the sculptor Henri Gaudier-Brzeska. Outerbridge & Lazard, New York 1971, ISBN 0-900406-16-X, (Nachdruck der Ausgabe: London 1931).
Peter Groth: Der Vortizismus in Literatur, Kunst und Wissenschaft. Studien zur Bewegung der „Men of 1914“. Ezra Pound, Wyndham Lewis, Gaudier-Brzeska, T. S. Eliot u. a. Buske, Hamburg 1971, ISBN 3-87118-088-2, (Zugleich Dissertation, Universität Hamburg 1972).
Ezra Pound: Henri Gaudier-Brzeska. In: Ezra Pound: Über Zeitgenossen. Verlag Die Arche, Zürich 1959, (Sammlung Horizont), S. 21–26.
Lisa Tickner: Now and Then: The Hieratic Head of Ezra Pound, in: Oxford Art Journal, Volume 16, Issue 2, 1993, S. 55–61
Roger Secrétain, Gaudier-Brzeska, 1891-1915. Un sculpteur maudit, Paris, Le Temps, 1980.
Serge Vannier, Les Hommes célèbres du XXe siècle dans le Loiret, Romorantin, Éditions CPE, 2001.
Doïna Lemny, Henri Gaudier-Brzeska : un sculpteur « mort pour la France » : de l’anarchie au patriotisme héroïque, Fage, 2015.
Jomy Cuadrado, La vie rêvée d’un ange ou La stratégie du tailleur de pierre, Théolib, 2016.

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