アンリ1世 (シャンパーニュ伯)

アンリ1世（シャンパーニュ伯）

アンリ1世（Henri Ier de Champagne, 1127年12月 - 1181年3月16日）は、12世紀のシャンパーニュ伯であり、「自由伯」（Henri Ier le Libéral）とも呼ばれました。彼はブロワ伯ティボー4世とマティルド・ド・カランティの長男として生まれ、フランス王ルイ7世の王妃アデル・ド・シャンパーニュの兄にあたります。

生涯

アンリ1世は、ルイ7世が主導した第2回十字軍に参加し、クレルヴォーのベルナルドゥスが東ローマ皇帝マヌエル1世コムネノスに宛てた推薦状を携えました。1148年にはアッコで開かれたエルサレム王ボードゥアン3世の集会にも名を連ねています。

父の死後、彼は一族の領地を弟ティボーに譲り、自身はシャンパーニュ伯の地位を選びました。当時、ブロワなどの他の領地の方が豊かで発展していたため、この選択は驚くべきこととされました。アンリ1世は、シャンパーニュの経済的な可能性を見抜いていたと考えられます。彼の治世下、シャンパーニュ伯領はフランス諸侯の中でも屈指の富と軍事力を誇るまでになりました。

アンリ1世は、シャンパーニュの貴族たちに秩序ある支配を確立し、2000人近い家臣団を抱えていました。これはフランス王国の軍事力に匹敵する規模でした。彼の統治下、シャンパーニュは商人が集まる安全な場所となり、シャンパーニュの大市は中世ヨーロッパにおける長距離貿易と金融の中心地として発展しました。

また、伯爵の宮廷があったトロワは、文学の中心地としても栄えました。詩人ウォルター・マップもトロワの宮廷で歓待され、ボーヴェのエティエンヌは宮廷の侍従を務めました。

1179年、アンリ1世は再びエルサレムへ向かいますが、帰路、ルーム・セルジューク朝のスルタン・クルチ・アルスラーン2世に捕らえられ人質となりました。東ローマ皇帝が身代金を支払い、解放されたものの、アンリ1世は帰国後まもなく亡くなりました。

子女

1164年、アンリ1世はルイ7世と最初の王妃アリエノール・ダキテーヌの長女マリーと結婚しました。マリーとの間に4人の子供をもうけました。

アンリ2世（1166年 - 1197年）：シャンパーニュ伯、エルサレム王
マリー（1174年 - 1204年）：ラテン皇帝ボードゥアン1世皇后
ティボー3世（1179年 - 1201年）：シャンパーニュ伯
スコラスティク（1219年没）：マコン伯ギヨーム4世の妻

参考文献

Benton, John F. (October 1961). “The Court of Champagne as a Literary Center”. Speculum 36 (4).
Berry, Virginia G. (1969). “The Second Crusade”. In Setton, Kenneth M.. A History of the Crusades. I. The University of Wisconsin Press
Cline, Ruth Harwood (July 2007). “Abbot Hugh: An Overlooked Brother of Henry I, Count of Champagne”. The Catholic Historical Review 93 (3).
Evergates, Theodore (2007). The Aristocracy in the County of Champagne, 1100-1300. University of Pennsylvania Press
Evergates, Theodore (2016). Henry the Liberal: Count of Champagne, 1127-1181. University of Pennsylvania Press
Hamilton, Bernard (2000). The Leper King and His Heirs: Baldwin IV and the Crusader Kingdom of Jerusalem. Cambridge University Press

関連項目

* ブロワ家

もう一度検索