アン・ヴォーグ

アン・ヴォーグ：90年代を代表するガールズグループの栄光と苦悩

1989年、カリフォルニア州オークランドで結成されたアン・ヴォーグ（En Vogue）は、アメリカを代表するR&B／ポップス女性ボーカルグループとして、90年代の音楽シーンに大きな足跡を残しました。プロデューサーチーム「フォスター＆マッケルロイ」によって厳選されたメンバーは、卓越した歌唱力と洗練されたスタイルで、瞬く間に人気を博しました。

当初は「4U」というグループ名で活動を始めましたが、既に同名のグループが存在したため、ファッション雑誌『VOGUE』にちなんで「アン・ヴォーグ」と改名。この洗練されたネーミングは、彼女たちの音楽性とビジュアルを的確に表しています。

グループの最大の特徴は、メンバー全員がリードボーカルを務められる高い歌唱力です。曲によってリードボーカルが変わることで、楽曲に多彩な表情を与え、聴く者を魅了しました。代表曲である「Free Your Mind」をはじめ、多くのシングルがグラミー賞にノミネートされるなど、高い評価を受けました。

アン・ヴォーグは、その圧倒的な歌唱力とパフォーマンスで、TLC、SWV、Jade、Xscape、デスティニーズ・チャイルドといった後続のガールズグループにも多大な影響を与えました。「90年代のスプリームス」と称されることもあった彼女たちは、時代を象徴する存在として、音楽史に名を刻みました。

しかし、グループは順風満帆とは程遠く、メンバー間の確執や脱退という苦難を経験します。2009年の再結成後も、2011年にはドーン・ロビンソンが、翌年にはマキシーン・ジョーンズが脱退。マネージメントや金銭面でのトラブルが、グループ分裂の大きな要因となりました。

ドーンとマキシーンは新たなグループ「Heirs to the Throne」を結成し、アン・ヴォーグの名を巡って訴訟に発展するなど、グループの分裂は深刻な事態へと発展しました。裁判の結果、アン・ヴォーグの名を使用する権利はシンディ・ヘロンとテリー・エリスにあると判決が下され、アン・ヴォーグの名を巡る争いは終止符を打ちました。

2019年には、かつて所属したレコード会社の重役、シルヴィア・ローンを称える授賞式で、マキシーンとドーンが一夜限りの復帰を果たし、ローナ・ベネットを含めた5人でのパフォーマンスが実現しました。これは、長年のファンにとって大きな喜びとなりました。

メンバー

現メンバー

シンディ・ヘロン (Cindy Herron)：ソプラノ。1993年に元メジャーリーガーのグレン・ブラッグスと結婚。4人の子供を持つ母親であり、女優としても活躍。
テリー・エリス (Terry Ellis)：コントラルト。1995年にソロアルバム『サザン・ギャル』を発表。
ローナ・ベネット (Rhona Bennett)：アルト。2003年に加入し、2008年のドーン脱退後はグループの中心メンバーとして活躍している。

旧メンバー

マキシーン・ジョーンズ (Maxine Jones)：アルト。2001年、2012年に脱退と復帰を繰り返した。
ドーン・ロビンソン (Dawn Robinson)：ソプラノ。1997年、2011年に脱退と復帰を繰り返した。ルーシー・パールとしても活動。
アマンダ・コール (Amanda Cole)：アルト。マキシーンの休養中に参加。現在はミュージカル歌手として活動。

ディスコグラフィ

アン・ヴォーグは、数々のアルバムやシングルをリリース。代表的なアルバムとしては、『Born To Sing』（1990年）、『Funky Divas』（1992年）、『EV3』（1997年）、『Masterpiece Theatre』（2000年）などがあります。また、コンピレーションアルバムやEPも多数リリースされています。

来日公演

アン・ヴォーグはこれまで何度も日本公演を開催し、日本のファンを魅了してきました。1991年の日本武道館公演を始め、ビルボードライブでの公演なども行われています。

アン・ヴォーグは、90年代を代表するガールズグループとして、その音楽性とパフォーマンスで多くのファンを魅了し続けました。メンバー間の確執や脱退という苦難を経験しながらも、シンディとテリーを中心に活動を続け、その輝きは今もなお、多くの人々の心に響き渡っています。

もう一度検索