ア・ホーマンス

ア・ホーマンス

『ア・ホーマンス』は、狩撫麻礼が原作、たなか亜希夫が作画を手がけた日本の漫画作品です。『漫画アクション』（双葉社）で連載され、阿呆 (Aho) とパフォーマンス (Performance) を組み合わせた独特のタイトルが印象的です。1986年には同名で映画化もされました。

あらすじ

物語は、新宿の路地裏で記憶を失った男が、浮浪者に助けられる場面から始まります。一方、男を探す妻、栞は、彼の過去を辿りながら、徐々にその人物像を明らかにしていきます。男、大輔は仙台在住の建築デザイナーであり、過去には北西メキシコのインディアンと共に、儀式用のペヨーテ（幻覚サボテン）を採取する旅に出ていたことが判明します。選ばれた者しか立ち入れない採取地で、大輔は呪術師の亡き息子に似ていたことから、その役割を担うことになります。42日間にも及ぶ過酷な旅の中で、彼は一度死んだような体験をし、そこで何を見たのか、記憶を取り戻すことはありませんでした。再会を果たした栞に、大輔は過去を思い出せない苦悩を打ち明け、共に暮らすことが必ずしも幸せではないと告げます。そして、彼は真の自己を求めて、再び旅に出ることを決意します。

登場人物

記憶喪失の男（彼末大輔）: 仙台在住の建築デザイナー。過去には北西メキシコでの調査に参加。
栞: 大輔の妻。

映画

映画版『ア・ホーマンス』は、松田優作が監督・主演を務めた作品です。やくざ抗争に巻き込まれた記憶喪失の男を中心に、欲望と暴力が渦巻く新宿の街で繰り広げられる人間ドラマを描いています。原作とは設定が異なり、「記憶喪失の主人公と彼を取り巻く人々のドラマ」という要素のみが共通しています。松田優作は、漫画の一コマからインスピレーションを得て、映画化を決意したと言われています。当初は小池要之助が監督を務めていましたが、作品の解釈の違いから途中降板し、松田優作が監督を引き継ぎました。

映画版あらすじ

新宿に現れた記憶喪失の男（風）は、暴力団の抗争に巻き込まれていきます。大島組の幹部である山崎は、風の自由な生き方に惹かれ、彼を自分の経営するデート喫茶で働かせます。抗争が激化する中、山崎は大島組の組長を殺害した旭会への復讐を計画しますが、組織の思惑に翻弄され、葛藤を深めていきます。風の存在に影響を受けた山崎は、組を抜け、単身で敵討ちに向かう決意をします。しかし、山崎は藤井に雇われたヒットマンによって銃撃され、風は山崎の仇を討ち、再び街を去ります。

キャスト

風：松田優作
山崎道夫：石橋凌
杉本千加：手塚理美

スタッフ

監督：松田優作
原作：狩撫麻礼、たなか亜希夫
脚本：丸山昇一、松田優作
音楽：奈良敏博、羽山伸也

映画作品について

松田優作は監督として、役者の個性を引き出すために「引き算」の演技指導を行いました。また、クライマックスシーンでは360度回転するカメラを使用するなど、実験的な映像表現にも挑戦しています。本作は、石橋凌と寺島進の映画デビュー作としても知られています。

評価

映画版『ア・ホーマンス』は、松田優作の初監督作品であり、その未熟さも指摘されていますが、独特のアジアンテイストや実験的な映像、丹念な人物描写などが評価されています。また、アクションから演技派への脱皮を模索していた松田優作にとって、転換点となる作品とされています。

外部リンク

ア・ホーマンス - allcinema
* ア・ホーマンス - KINENOTE

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