アーイシャ・ビント・アブー・バクル

アーイシャ・ビント・アブー・バクル：預言者ムハンマドの最愛の妻

アーイシャ・ビント・アブー・バクル（614年頃 - 678年）は、イスラーム教の預言者ムハンマドの3番目の妻であり、初代正統カリフであるアブー・バクル・アッ＝スィッディークの娘です。スンナ派イスラム教徒からは、預言者ムハンマドの最愛の妻として非常に尊敬されています。

生涯

生誕と初期

アーイシャは、アブー・バクルとウンム・ルーマーンの間に生まれました。彼女はムハンマドと親戚関係にあり、姉のアスマーと共に、初期のイスラーム教徒として信仰を深めました。ムハンマドは、アーイシャが幼い頃から彼女と親しくしていました。

結婚

ムハンマドは最初の妻ハディージャを亡くした後、アブー・バクルの勧めにより、623年にアーイシャと結婚しました。ハディースによれば、アーイシャは6歳でムハンマドと婚約し、9歳で結婚式を挙げ、ムハンマドが亡くなるまでの9年間を共に過ごしたとされています。この結婚年齢については議論がありますが、当時の社会では、有力な家系の子女が10歳前後で結婚することは珍しくありませんでした。

ムハンマドは、アーイシャ以外にも多くの女性と結婚しましたが、アーイシャは彼が結婚した女性の中で唯一の処女でした。

アーイシャの首飾り事件

627年、ムスタリク族との戦いの帰りに、アーイシャは首飾りを失くしてしまい、砂漠ではぐれてしまいました。彼女は青年兵士サフワンに助けられましたが、このことがアーイシャの不義疑惑を招き、大きな政治問題に発展しました。しかし、最終的にムハンマドが彼女の潔白を証明する天啓を受けたと主張したことで、事件は解決しました。この事件は、アブー・バクルと後の第4代カリフであるアリー・イブン・アビー・ターリブの関係に亀裂を生じさせました。

ムハンマドの臨終

ムハンマドは病に苦しむ中、アーイシャの部屋で息を引き取りました。彼女はムハンマドの歯を磨き、その唾を自分の唾と溶け合わせることを神に許されたとされています。このことから、スンナ派ではアーイシャはムハンマドの最愛の妻と見なされています。

ムハンマドの死後

アーイシャはムハンマドの言行をよく記憶しており、多くのハディースや伝承を伝えました。ムハンマドの死後、彼女は初期イスラーム社会に強い影響力を持ち、第3代カリフのウスマーン・イブン＝アッファーンの政策を批判するなど、政治にも関与しました。

ラクダの戦い

アーイシャは、第4代カリフとなったアリー・イブン・アビー・ターリブに反抗し、656年のラクダの戦いに参加しましたが、アリーに敗れました。その後、彼女は政治から退き、預言者の教えを人々に伝え、マディーナで亡くなりました。生涯再婚することはありませんでした。

アーイシャの位置づけ

アーイシャは、スンナ派イスラム教徒にとって尊敬されるべき女性像の典型と捉えられています。彼女の名前は、ムハンマドの最初の妻ハディージャの名と並んで、ムスリムの女性に好んで付けられる名前です。

一方、シーア派はアーイシャを嫌い、彼女が伝えたとされるハディースも信用していません。シーア派では、アリーの妻でムハンマドの娘であるファーティマが理想の妻・女性像として称揚されています。

アーイシャは、イスラム史において重要な役割を果たした女性であり、彼女の生涯と業績は、今日でも多くの人々に影響を与えています。

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