アーサー・ヘンダーソン

アーサー・ヘンダーソン：激動の時代に平和を求めた政治家

アーサー・ヘンダーソン（1863年 9月13日 - 1935年 10月20日）は、イギリスの政治家であり、軍縮主義者として知られています。1934年にはノーベル平和賞を受賞し、その功績は国際的に認められました。彼はまた、1908年から1910年、1914年から1917年、1931年から1932年の3度にわたり労働党の党首を務め、イギリス政界において重要な役割を果たしました。

生い立ちと初期のキャリア

ヘンダーソンは1863年にスコットランドのグラスゴーで、織物職人の息子として生まれました。10歳の時に父親を亡くし、その後、一家はイングランドのニューカッスル・アポン・タインに移り住みました。幼い頃から経済的に苦労したヘンダーソンは、12歳から機関車工場で働き始めました。17歳で徒弟期間を終えると、サウサンプトンに1年間滞在し、その後ニューカッスル・アポン・タインに戻り、鉄型職人として生計を立てました。1879年には会衆派教会からメソジストに改宗し、信仰に篤い生活を送りました。1884年に職を辞してからは、勉学と説教に専念しました。

労働運動への参加と労働党の結成

1892年、ヘンダーソンは鉄工業者組合の理事に就任し、労働組合運動の世界に足を踏み入れました。同時に、北東調停委員会の代表にも選出され、労働問題の解決に尽力しました。ヘンダーソンは、ストライキは利益よりも害をもたらすことが多いと考え、可能な限りストライキを回避しようと努めました。また、労働組合連盟がストライキの発生を増加させると考え、その設立には反対しました。

1900年、ヘンダーソンは129人の労働者代表の一人として、ケア・ハーディによる労働者代表委員会の結成に参加しました。1903年には同委員会の会計係に選出され、バーナードキャッスルの補欠選挙で下院議員に初当選しました。1906年、労働者代表委員会は労働党と改称し、29議席を獲得しました。1908年にハーディが党首を辞任すると、ヘンダーソンが後任の党首に就任し、1910年まで務めました。

大臣としての活躍

1914年に第一次世界大戦が勃発し、労働党党首のラムゼイ・マクドナルドが辞任すると、1915年にヘンダーソンが再び党首に選ばれました。首相のハーバート・ヘンリー・アスキスが連立政権の樹立を決定すると、ヘンダーソンは労働党出身者として初めて教育大臣に任命されました。1916年にデビッド・ロイド・ジョージがアスキスを辞任に追い込み、首相となると、ヘンダーソンは無任所大臣として縮小された戦時内閣に留まりました。労働党からは、他にジョン・ホッジ（労働大臣）とジョージ・バーンズ（年金大臣）が入閣しました。しかし、戦時国際委員会の設立が内閣の投票で否決されると、ヘンダーソンは1917年8月に辞任し、労働党党首も辞任しました。

戦後と外務大臣時代

1918年の総選挙でヘンダーソンは落選しましたが、翌年の補欠選挙で国政に復帰し、労働党の院内幹事となりました。1923年の総選挙で再び議席を失いますが、2か月後の補欠選挙で再び国会議員となりました。1924年にマクドナルドが初の労働党政権を樹立すると、ヘンダーソンは内務大臣に指名されました。しかし、この政権は『デイリー・メール』紙が掲載したジノヴィエフ書簡の影響などにより、1924年の総選挙で敗北しました。ヘンダーソンは1924年の総選挙で当選し、他の党員から後任の党首になることを要請されましたが、これを辞退しました。彼は労働党内の派閥争いを懸念し、労働党の目的を明確にするために小冊子『Labour and the Nation』を出版しました。

1929年、労働党が再び政権を握ると、マクドナルドはヘンダーソンを外務大臣に指名しました。ヘンダーソンはソビエト連邦との関係を再構築し、国際連盟に全面的に協力しました。政府は議会では少数派でしたが、正常に機能していました。しかし、世界恐慌が発生すると、政府は危機に直面しました。

マクドナルドの「裏切り」と晩年

1931年、国家予算が深刻な赤字に陥っていることが判明し、危機が訪れました。イギリスの金融システムは信頼を失い、金本位制におけるポンドの地位が脅かされました。労働党政権は金本位制を維持し、予算の均衡を図ることに同意しましたが、いくつかの提案は否決されました。ヘンダーソンは、閣僚の約半数が雇用保険の削減に反対していることを知り、辞任しました。1931年8月24日、マクドナルドは危機を乗り切るために、すべての政党の議員からなる挙国一致政府を樹立することを宣言しました。しかし、ヘンダーソンを党首とする労働党はこの政府への参加を拒否しました。挙国一致政府は総選挙を実施し、与党が地滑り的大勝利を収めました。労働党は46議席にとどまり、ヘンダーソン自身も議席を失いました。翌年、ヘンダーソンは党首を辞任しました。

ヘンダーソンはクレークロスでの補欠選挙で再び国政に復帰し、残りの人生を戦争を阻止することに捧げました。彼は世界軍縮会議を主催し、1934年にはノーベル平和賞を受賞しました。1935年、ヘンダーソンは72歳で亡くなりました。彼の息子たちのうち2人が労働党の政治家となり、次男のウィリアムは1945年に、三男のアーサーは1966年に男爵となりました。

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